気持ちの良い晴天に恵まれた昨日、

かねてより見に行きたかったギュスターブ・クールベ展に行ってきました。

※山梨県立美術館「クールベと海」
会期:2020年9月11日(金)〜2020年11月3日(火・祝)

クールベは19世紀に活躍したフランスの画家だそうです。「睡蓮」で有名なクロード・モネに影響を与えた人物の一人とのこと。

山々に囲まれて育ったクールベは、22歳の時初めて海に出会います。その衝撃から海の風景画を好んで描きました。

海をモチーフとした絵は、当時のサロン(パリで開催される公式美術展覧会)では別段新鮮なものではなかったようです。海に対する畏怖や高揚といった感傷性・物語性に富む絵画が評価されていた時代だそうです。

しかしクールベは、ただ「海」を描きました。目の前に広がる「海」の一瞬一瞬を、その感動をともに絵画に起こし、サロンで評価されたのです。

レアリスム(写実主義)。後の人は彼の精神をこう呼んでいます。

このクールベ展。とても心に残りました。

レアリスムの代表的な画家であること、そしてかの有名なモネに影響を与えた人物であること。

今回私の心に残った理由は、そんな彼が残した功績とは一切関係のない所です。

そのままを写す。

それがいかに難しいことなのか。そのことを改めて感じることが出来たことが、とても興味深かったです。

人が何かをしようとする時、そこには必ずと言って良いほど何かが含まれてしまいます。

こうしたいという意図、こうであるべきだという思想。

そういったものが、必ず含まれてしまうものです。それは、漢方も一緒です。

勉強してきたことを出したい。自分の理論で患者さまを治したい。それがダメだとは言いませんが、それって本当に患者さまを観れているのでしょうか。

そのままを観るって、とても難しいことです。自分をどこまで消し去れるのか。でも本当に消し去ったら何も出来ません。そのギリギリの心持ちがとても難しいと感じます。クールベの絵を見ながら、そんなことを私は考えていました。

クールベの描いた海。それは彼が海を見た時の感動がそのままに、迫力あるタッチで描かれています。

「自分は生きた芸術をつくりたいのだ」

後に「レアリスム宣言」と呼ばれる彼の文章には、そう書かれています。

海の表情を一つ一つ紐解くように、感じたままの心の動きをパレットナイフで表現する。

躍動的な波、荒々しくも繊細な飛沫、しかし私が一番見入ったのはそれらの絵ではなく。

彼が晩年に描いた海の絵。

ただ暗く静かに描かれた海。まるで抽象画のように、水平線さえ判然としない空間が広がっていました。

感動さえも排除されている。

クールベ展は明日までだそうです。