人間の死亡率は100%であり、どのような医療であってもこの数値を回避することはできません。

ある意味で死と向き合うことこそが医療であると、そう言っても過言ではありません。

良いか悪いかは置いといて、

東洋医学根幹の聖典として名高い『黄帝内経(こうていだいけい)』という書物には、

「死の回避」つまり不老長寿の思想が色濃く反映されています。

人の生は短い。それに比べれば地球環境の寿命は永遠に見える。

もし人と自然とが合一できるのであれば、その時は悠久の寿命を得ることができるだろう。

そういう思想の中で、人とは何か、病まずにいるにはどうしたら良いのかを論じているのです。

したがって、この思想をそのまま応用することには無理がある。

しかしその一方で、この思想の中にこそ東洋医学根幹の哲学が内在されていることもまた事実です。

この書を読み、この書の矛盾に気付き、より現実的な方向へ、より具体的な方向へと思想を広げた人がいる。

張仲景(ちょうちゅうけい)。

漢の時代、病との真っ向勝負を壮大な理論にまで押し上げた書物『傷寒論(しゅうかんろん)』の作者です。

この書には「死す」という言葉がたくさん出てきます。

この時これをやってしまうと死なせてしまうぞ。

こういう状況があるならば、それはもう助からないぞ。

もし死と向き合うことが医療であるならば、

東洋医学の歴史上、誰よりも先に医療を行ったのは彼だと言えるのではないでしょうか。

古典を読む時、このことを感じながら読んでみてください。

一文一文、入ってくる内容が変わるかもしれません。