後から気が付く

2023年06月26日

漢方坂本コラム

みぎひだり

交互に詰まる

梅雨の鼻

梅雨ですね。

私は毎年、梅雨になると鼻が詰まります。

ある時から始まったこの風物詩は、今年もやっぱり起こりました。がっくし。

対応の仕方や効く薬は分かってきたのですが、

梅雨の間はどうしてもゼロになりません。

多分、日々生活の養生に隙があるのだと思います。

お願いする立場でありながらの節制不足。不甲斐無さを痛感しております。

とはいえ私は、梅雨が好きです。

梅雨特有の空気というか、梅雨が作り出す空間の質がとても好きです。

例えばグレーに染まる空とか、夜に光る濡れたアスファルトとか。

車があげる水しぶきも良いです。目の前を通り過ぎて、音が消えていく感じが好きです。

何より出不精の私には、家にいて良いよ、と言われている感じがして心地がよく。

いつも以上に寝ているお萩(飼い猫)も見ているのも心が和みます。

昔、高校生の時パリに行きました。

そしてあのグレーに染まる街が、私はとても好きでした。

もともと雨が多い町だそうで、重い雲が街全体に広がっていました。

空も壁も石畳も、すべて濃淡の異なるグレー。

雨がシトシト、そして濃淡に艶が生まれる。

そんな街を、ネイビーのピーコートを着た金髪の人たちが、傘もささずに歩いているわけです。

たまりません。色と光と、空気と湿度が織りなす街全体の空間の質。

こういう町で育ったならば、きっと独特の感性を持ち合わせるのだろうなと、高校生ながら感じたものです。

世界から見た時、日本はどう映っているのでしょう。

日本の風土というか、空間の質。

やはり海外の人から見たら、独特の、他にはない空気を感じられるのではないかと思います。

日本に住んでいると、どうしても毎日が当たり前で、

ここだからこそ感じることのできる空間の質を、意識することがなくなってしまいます。

勿体無い気がします。

ただそれは、決して悪いことでは無いとも思います。

意識しないということは、とても美しいこと。

外連けれんが無い。

当たり前に行っている動作や思考にこそ、美しさが宿ると思うのです。

なぜ自律神経は、自律して働いてくれているのでしょうか。

自分の体は、自分の意思でコントロールすることができません。

そういう作りになっています。人間は自分の意志で生きているように見えて、実はそれだけでは生きてはいけません。

全自動であらゆる刺激を感知し、そこから然るべき動きを導く自律神経の働き。

そういう神秘を宿しているのが人間です。

意識の向こう側にこそ、それがあるということです。

何もしない。

意識もしない。

意識しないで済むことこそが、人が持つ本来の美しさ。

だとしたら、人はそもそもが美しい。

自律神経が調うとき、

必ず起こる「治り方」というものがあります。

それは「そう言えば症状が無くなってる」と、後から気が付く・・・・・・・ということ。

そう言えば調子よかった。

言われてみれば、あの症状を感じない。

意識しないということ。

私の鼻はまだ、梅雨を私に意識させ続けています。



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