今ではもうあまり作らなくなっているのですが、
先代である父がまだいた頃、
丸剤(がんざい)と呼ばれる玉の薬をよく作っていました。
大量の生薬の粉に沸騰させたハチミツを混ぜ、
それをこねてこねて最終的にはパチンコ玉くらいの大きさに丸めます。
丁寧に丸めると黒くピカピカに光った丸剤が出来上がるのです。
あれ、大変だったなぁ。
熱々のハチミツでたくさんヤケドしました。
父は作業の効率化を図るため、
それ用の道具をいっぱい作って試していました。
お盆の周りに皮を張り巡らせたやつ(玉いっきに丸める盆・改)は確かに傑作で、
父が遺した功績の一つだと思う。息子しか知らないけれども。
ただ父が言っていたのは、
「人の手」って凄いな、と。
どんなに道具や器具を作っても、
「人の手」でやる方がずっとキレイに仕上がるぞ、と。
しかもキレイって、形がキレイ、ということだけではなくて。
出来上がった玉がなぜか掴みやすい。手に持ちやすく、座りが良い。
それも含めてキレイに仕上がるのです。
人の手って、先端が五本に枝分かれしているけど、
意味があってこの形に落ち着いたんだろうな・・。