春の刺激

2024年04月15日

漢方坂本コラム

天候の極端な波を生じた今年の春。

3月になっても雪が降り、一気に気温が上昇し、

かと思えばまた寒くなり、そうこうしているうちに4月に入りました。

毎年4月の始めは、気候が乱れるものです。

桜が咲くと急に寒くなる。雨が降ったり風が強くなったりもします。

いゆわる花冷えですが、そうやって桜が散っていく中、

今年も当然そうなりましたが、その寒暖差たるや、とても激しいものでした。

最近思うのですが、

私が「普通」と思っていた気候は、すでに存在しなくなっているのかもしれません。

2月雪が降り、3月は暖かくなり、

その勢いで桜が咲いて、4月に一時寒くなる。

そうやって5月に向かって徐々に天候が安定してくるのが、「普通」の春だとすると、

そんな当然の変わり方は、ここ数年みかけておりません。

激しい寒暖差の中、今年の春は体調を乱してしまう方が多く、

そして現在進行形で、崩している方もいらっしゃいます。

ただし、さすがにもう4月の中旬。

ここから先は、天候も穏やかになっていくでしょう、

強い寒暖差と気圧差によって起こっていた症状は、おそらく安定へと向かうはずです。

と、思いたいところですがどうでしょうか。

普通の5月が来てくれることを祈るばかりです。

今年の3月4月と、明らかに悪化したなぁ、、、という病がいくつかあります。

まずは消化器症状。

胃痛や胃もたれ、下痢や便秘、食欲不振や吐き気など。

そして特に悪化したのが、慢性膵炎(もしくはその疑いがある方)を患われている患者さまたちでした。

膵臓に負担を持つ方の消化器症状は、急激な冷え込みにより悪化する傾向があります。

左上腹部が詰まって痛み、背中の方にまで痛みが波及します。これが、夜間と朝方、急激に冷え込む時に起こりやすくなります。

私の感覚では、3月から4月にかけてのある一週間。急に冷え込みが強くなった時に、膵炎の患者さまが一気に症状を悪化させました。

膵炎の患者さまが同時多発的に悪化することは比較的めずらしいのですが、その時はちょうど強い冷え込みが全国を襲った時でした。

そして今回の春、胃腸と同時に明らかに乱れたのが自律神経です。

自律神経失調に伴う「不安感と焦り」。これが消化器症状と併発して起こるケースを散見しました。

そもそも消化管は自律神経支配の臓器であり、身体の緊張や興奮と密接に関わっています。

したがって胃腸が乱れてくると、自律神経も乱れます。不安や焦りといった精神症状をしばしば併発させてきます。

今回の膵炎悪化の時も、このような精神症状を多くの方が伴っていました。

例えばお腹の痛みに対して不安や恐怖が強くなり、どうしようどうしようと落ち着かなくなってしまう。

そしてこの気持ちの乱れは、時に体の不調よりも前面に出てきます。

腹痛が起きていない時であっても、今度起きたらどうしようという恐怖と不安で居ても立っても居られなくなります。

春の不調は大変厄介です。肉体の乱れと同時に、こういうメンタルの乱れを起こしてくる傾向があるからです。

どんな病気もそうですが、いざ病を改善しようとした時に、

そこに精神面での不調が関わっているかどうかで、

治療の難易度は大きく変わってきます。

精神面での不調が関わっている場合は、その多くが肉体的にも「敏感さ」を伴っています。

この「敏感さ」に対して配慮することがとても重要で、

「効くけれども、効き過ぎない」という、丁度良い塩梅の薬を提供することが必要になります。

漢方薬は総じて、刺激を与えることで体を変化させ治癒へと導きます。

そして丁度よい刺激こそが、薬の効果です。

したがって敏感であればあるほど、その微調節が大切になります。

そして精神面での不調が無い方のほうが、まれだと言っても過言ではありません。

つまり漢方治療は、繊細なお体に優しく、上手に響かせるということを常に念頭に置きます。

そんな繊細な治療の中で、

敏感なお体を蹂躙するかのような、気圧や気温の乱高下という強力な春の刺激。

ほんとに止めてほしい、、。

仕方ないこととはいえ、天候の急激な変化はお体に大きな波を作り出してしまいます。

当薬局におかかりになる患者さまの多くが、

とても敏感なお体の状態にあります。

そして、それを良い意味で鈍感に、強く、安定するように変化させています。

さまざまな刺激で不安定になりやすい敏感なお体であるが故に、どうしても天候の波は受けてしまうと思います。

しかし、前に比べれば乱れにくいという変化を積み重ねることで、

より強く、安定したお体を作り出していきます。



【この記事の著者】店主:坂本壮一郎のプロフィールはこちら

※コラムの内容は著者の経験や多くの先生方から知り得た知識を基にしております。医学として高いエビデンスが保証されているわけではございませんので、あくまで一つの見解としてお役立てください。

※当店は漢方相談・漢方薬販売を行う薬局であり、病院・診療所ではございません。コラムにおいて「治療・漢方治療・改善」といった言葉を使用しておりますが、漢方医学を説明するための便宜上の使用であることを補足させていただきます。