水にやられる夏・水の飲み方について

2022年07月08日

漢方坂本コラム

夏の養生について。

本日も前回同様、夏の養生について話していきます。

梅雨明けの早い今年、必然的に夏が長くなります。

酷暑が予想されることから、予断を許さない夏、という印象です。

急に夏が訪れたために、最近体調の悪化を実感されていかたが多くいらっしゃいます。

中には「暑いのもあるけど、どうしてこんなに体調が悪いのか分からない」という方もいます。

特に自律神経の乱れから不安症状を抱えておられる方にその傾向が強く感じられます。

夏には夏の体調管理があり、

そして夏には夏の、自律神経の整え方があります。

ポイントはいくつかありますが、今日は「水」について。

水の飲み方。これからの体調悪化を未然にふせぐためにも、是非知っておいていただきたいと思います。

がぶがぶ飲まない

夏になると必ず流れるアナウンスがあります。

「喉が渇いてからでは遅い。喉の渇きを感じる前に、しっかし水分補給をしておきましょう」というアナウンスです。

強い喉の渇きを感じた時は、すでに人体からかなりの水が抜けている状態です。

したがってそうなる前に、早めに水を飲みましょうという指導。確かにそう、ではあるのです。

しかしこのアナウンス、そのまま実践すると、逆に体を壊してしまうことがあります

ポイントは「水の飲み方」です。ごくごく・がぶがぶと飲むことだけは、避けてほしいのです。

前回のコラムでお話したように、夏になると水に対して胃腸が非常に敏感になります。

夏は体が自然と体内の熱を外に放散しようと働きます。したがって内臓が冷えやすく、そして胃腸が疲れやすくなります。

そのため冷たい水をがぶがぶ飲むと、胃腸がどんどん冷えていきます。

そして胃腸の血流が悪くなり、食事からエネルギーを作り出すという胃腸の根本的な働きが弱くなっていきます。

冷たい水で胃腸を冷やす、大量の水で胃腸を重くさせるというのが、夏のエネルギー不足、すなわち夏バテの原因になるのです。

つまり水(もしくはアイスや果物)で胃腸を冷やさない大量の水を一気に流し込まない、というのが夏バテ予防の基本になってきます。

強く喉が渇く時というのは、確かに体が脱水の方向へと向かっている時です。

そのため運動前とか、通勤前とかの、これから汗をかくぞ、という時は前もって水分を補給しておくことが必要です。

しかしこの時、喉が渇いてもいないのに、水をがぶがぶとたくさん飲むというのは絶対に間違いです。

水はちびちび飲む。なるべくなら常温に近い水を、特に喉が渇く前なのであれば、口の中で吸収させるくらいの量でちょっとずつ、少しずつお飲みください。

水でお腹いっぱいにしない

水をたくさん飲むということで起こるもう一つの弊害は、

水でお腹いっぱいになってしまうことです。食事を取る余力が、なくなってしまうからです。

体に強い負担がかかる暑い夏では、生活しているだけでどんどんエネルギーを消耗していきます。

そのためエネルギー補給が体調管理の要になります。いかに食事をちゃんと摂るかが、夏バテを起こさないようにするための重要ポイントになるのです。

しかし夏は暑く、かつ汗をかきやすいため、当然水分を欲するようになります。

また果物がおいしい季節になりますので、食事の代わりに果物で済ませるという方も多いと思います。

日中にたくさんの水分を摂取した結果、夕食時になってもお腹が減らず、食事に手が伸びなくなるという現象。

これこそが、夏バテの最大の原因になります。水分や果物だけでは、決してエネルギーを補充しているとは言えないのです。

夏バテを誘発する簡単な方法は、水分をたくさん入れて、食事を摂らなくすることです。

胃腸が食物を熟す力をどんどん失っていきます。さらに水で冷えて重くなった胃腸が、食事をどんどん受け付けなくなってきます。

そうすると、全身の脱力感に加えて、顕著な集中力の低下が起こってきます。

体の芯が熱っぽくなり、熱中症のような状態へとすぐに向かっていきます。

これがいわゆる夏バテの状態です。水を飲むことが重要な夏であるからこそ、夏は水にやられやすい季節でもあるのです。

ちびちびと水分補給をすることは大切ですが、絶対に食事を摂る余力は残してください

筋力が弱く体が細い方はもちろんのこと、体格がしっかりしている方であっても、スポーツ後に水ばかり飲んでいると、この状態にすぐさま陥っていきます。

少々食欲が落ちたとしても、ゆっくり良く噛みながらちゃんと食事を摂りましょう。冷たいそうめんとかでも良いのですが、そればかりではだめです。温かいご飯やたんぱく質を、できるだけちゃんと食べるようにしてください

今回は「夏の水の飲み方」について、ダイジェストで解説していきました。

夏こそ必要である水分、だからこそ、如何に胃腸を壊さないように水を摂るのかが大切であるというお話でした。

そして胃腸の弱りは夏バテだけでなく、身体の自律神経を容易に乱します。

胃腸が壊れると体がリラックスできなくなり、パニック障害や自律神経失調が起こりやすくなるのです。

本日からでもできる養生だと思いますので、夏に体調を悪化させないよう実践してみてください。



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