漢方とアート 5 〜文化の育ち方〜

2020年09月10日

漢方坂本コラム

昔、友達から聞いたのか、何かの雑誌で見たのか、出所をスコンと忘れてしまいましたがこんな話がある。

日本人の芸術や芸能といった文化のはぐくみ方には面白い特徴があると。

「自分たちにしか分からない」ということに、ことのほか日本人は重きを置くのだという。

確か日本の文化を研究している外国の方が言っていたこと。論文だったかな。

自分たちがやっていることの良さを、外に向かってアピールすることが普通なのに、日本人はそれをわざとしない。「この良さわかる?」という感じで分かる人たちだけで集まって楽しんでいるという何とも陰気な風潮があるのですと。そんな話だった。

これを聞いた私は「ははあん」と思った。本当にそうだ。日本人(というか私や私の周りの友達連中)にはそういう所がある。

正直ひねくれているし褒められたことじゃあない。堂々とアピールした方がすがすがしいし周りのためにもなるだろう。

しかしそれだと「粋」じゃあない。なんか分からないけど。説明してしまったら終わりっていう謎の「言わずもがな感」がある。

そして漢方の書籍にも、こんな排他的文化が滲んでいると私は思っている。

はじめ何言っているか全然分かんないんだけどある時ハッと気づいて「なるほどな」って思って再度その文章を見る。「こんな言い方する?」と思う。「わざと分かりにくく言ってない?」と感じる。特に江戸から明治の書籍にそれがある。

ただ、だからこそ面白いなとも、確かに感じるんですね。日本人だからか。

その論文、確か結語はこうだった。

「自分たちだけで楽しんで、自分たちしか分からない良さを追求する。広がりという意味で一見まったく逆行するこの姿勢の結果、日本人は最終的にとてつもない文化を形成してきた。独創的に過ぎるようでありながら本質を突くような。他国の人間には決して作れないと感じさせるような文化を、日本人のこの姿勢こそが作り上げてきたのである。」

情報をいくらでも発信し、共有できる今だからこそ、どこか感じ入るものがある。



漢方とアート

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