漢方治療の心得 20 〜何を治すのか〜

2020年12月12日

漢方坂本コラム

私が得てきた漢方治療の技とコツを、お伝えするべく始めた「漢方治療の心得シリーズ」。

早いもので20回目を迎えました。

こうやって見るとしみじみと思います。尽きないものだなと。

たくさんの先生方から、

そして、たくさんの患者さまたちから、

本当にたくさんのことを教えてもらってきたのだなと。

感謝しかありません。

20回目ということで、

私が最初に感じた臨床のコツをお話しようかと。

父から一番最初に受けた叱責で、

今では苦い記憶とともに、私の大切な口訣の一つです。

膝の痛みを訴えていた患者さま。

膝に水が溜まってしまう変形性膝関節症の患者さまです。

私は「苓桂朮甘湯(りょうけいじゅつかんとう)」を出しました。

我ながら、自信を持っての選択だったことを覚えています。

膝の痛み以外にも、

この患者さまは頭痛や立ちくらみを訴えられていたし、

足の浮腫みを気にされていた。

だから、この処方がピッタリだと思ったのです。

苓桂朮甘湯は水を治す薬。浮腫みにも良いし、立ちくらみにも効く処方。

さらに浅田宗伯の『勿誤薬室方函口訣(ふつごやくしつほうかんくけつ)』には、

痿躄(いへき:あしの萎え)に良いと書いてある。

いける、と確信に近い気持ちで、

煎じ薬を出しました。良くなるはずです、なんて言葉を添えながら・・・。

今考えると、何と恥ずかしいことか。

ちっとも効きませんでした。

立ちくらみは少しは良くなった。浮腫みも、少しは良くなりました。

でも膝の痛みは全く取れない。

一カ月・二カ月と服用してもらっても、

ちっとも効きませんでした。

その時、言われた父の一言。

「痛みを取る薬を出せ。」

はじめ、何それ?と思いました。けど、

この言葉、とても深い意味のある言葉でした。

いくら東洋医学の理屈を知っていても、

いくらその方の体質に合った薬を出しても、

痛みを取りたいなら、痛みを取るための薬を出す。

そうしなければ、当然痛みは取れません。

当たり前のことですが、実は結構見落とされがちなのです。

特に、机上の理論ばかりを勉強していた自分には。

患者さまに合う処方を出す、

その意味を、大きくはき違えていました。

それから私は、痛みについて勉強し直しました。

古典を引っ張り出し、文献を引っ張り出し、

痛みについて、漢方ではどう考えて今まで治療してきたのかを、

一から勉強し直しました。

痛みの違い、痛みの程度、それをどう判断して、どう解除していくのか。

患者さまを通して、勉強させて頂いたのです。

そして、痛みを取るための治療を何とか絞り出しました。

患者さまから、今回の薬はいい感じです!痛みが引いています!と伝えらた時、

深く安堵したと同時に、

何て大きな勘違いをしていたのだろうと、自分が情けなくなりました。

私にとって、臨床の第一歩目は、

この恥ずかしさと、気付きです。

20回目を迎えた今、

この恥ずかしさをもう一度、噛みしめたいと思います。



漢方治療の心得

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