漢方治療の経験談「産後の不調」を通して

2021年12月01日

漢方坂本コラム

漢方治療をお求めになる方は、どちらかと言えば女性の方が多いと思います。

そのため女性特有の体調不良、中でも妊娠・出産に関わる体調不良に関しては、当薬局でもたくさんのご相談が寄せられています。

妊娠と出産、そしてその後の授乳や育児。

赤ちゃんという生命を生み出し、守り、さらに育むことに費やされるすべての労力。

読んで字のごとく、身を削りながら・・・・・・・行われる人生の一大行事です。

妊娠・出産は、女性の体に必ず変化を及ぼします。一臨床家としてこの事実を目の当たりにするたびに、産後の不調に対して的確な漢方薬を選択することに強い責任を感じます。

出産を経験した後に、体調が悪くなったことを自覚されている方は多くいらっしゃいます。

しかし、明らかに体調不良が産後から始まっているのに、それを自覚されていない方もいます。こちらからよくよく伺うことで、初めて気が付く方もいるのです。

そういう方の多くは、出産からかなりの時間を経ている方です。

出産による体への影響は、それほど根深く残り続けることがあります。

産後かなりの年月を経た後に、症状として顕在化してくるということが実際に起こるのです。

時に漢方治療では「年齢」という要素が大きく適応処方を左右しますが、

それと同様に、「妊娠・出産」の経験があるということも、体質を決定づける要素になります。

確実に体に影響を残すのが出産です。女性の人生において、非常に大きなターニングポイントになります。

妊娠・出産を経ることで、具体的に何が起こるのか。

それを東洋医学の視点から少しだけ紹介します。

まず、妊娠・出産はすべて母体のエネルギーによって行われます。

エネルギーとは東洋医学的に言えば血の力です。

妊娠中、短期間で生命を育むには相当の力が必要で、そのため誰しもが血の力を消耗します。

そして出産においても当然ながらかなりの力を費やします。尋常ならざる痛みに耐えながら、常にいきむ状態を続けなければなりません。

さらに、体力の消耗はここで終わりません。

産後に赤ちゃんに与える母乳は、やはり母体の力によって作られます。したがって授乳中も常に体力を消耗し続けることになります。

それを夜泣きする赤ちゃんをあやしながら、自分の睡眠時間を削って行うのです。

妊娠・出産・授乳・育児。この流れの中で相当の体力を消耗し続ける中、

その消耗した力の回復は、すべて母体の自然治癒力にまかされています。

昔に比べて、現代の人は栄養状態が良くなりました。

さらに西洋医学の発展により、妊娠・出産の危険性は段違いに減少しています。妊婦さんに対する社会的なケアも充実してきました。

しかし母体の体力が全て、という点に変わりはありません。

もともと体力の無い方、また難しい出産を経験しなければならない方では、やはり母体の回復力に上乗せできる何らかの配慮が必要だと感じます。

また先で述べたように、産後しばらく経ってから、数ヵ月から時として数年後に症状が顕在化してくる方もいます。

・疲れているのに眠れない。
・小さいことでイライラしてしまい、必要以上に子供をしかりつけてしまう。
・頭痛が続いて苦しい。片頭痛が起き始めた。
・立ち眩みやめまいが頻発する。
・便秘や下痢など、排便異常が起こりやすい。

その他、膀胱炎になりやすくなったり、月経前症候群(PMS)が強くなったり、潰瘍性大腸炎アトピー性皮膚炎などの持病が悪化する方もいます。

西洋医学では、これらの症状と妊娠・出産とつなげて考えることはほとんどありません。

しかし、明らかに関連して生じていることがあるのです。

そして「転ばぬ先の杖」として、産後から前もって漢方薬を服用することで防げるものが多いのです。

漢方薬を上手に利用してほしい。

妊娠中の方、出産を控えた方、そして身を削りながら育児に励むお母さま。

ぜひこの事実を知っておいてほしいと思うのです。

漢方治療をお求めになる方は、女性が多い。

その中で、「もしこの方が、出産後すぐに漢方薬を服用し始めていたら・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・、きっとここまで悪化しなかっただろうな・・」と、

そう感じることがしばしばあります。

さまざまな難病や更年期障害、皮膚病やパニック障害、自律神経失調症や慢性疲労性症候群など、

多くの病の素因を形成する可能性がある、妊娠・出産。

できれば産後、もし自覚症状がなかったとしても、

漢方薬を利用してみることを、ぜひともご検討ください。



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