現代に生きている私たち

2023年08月29日

漢方坂本コラム

素朴な疑問です。

漢方薬について。

良く患者さまに尋ねられることですが、

何でこんなものを薬に?、という生薬ってたくさんあります。

例えば石膏せっこう

石です。普通に石の石膏。

あとは牡蛎ぼれいとか。カキの貝殻。

ちゃんと効きます、でも、

何でそんなものを飲もうと思ったのか?

昔の人のやることは、奇想天外。

私も自身も、そう思います。

飲むこれ普通、という生薬たち。

たくさんあります。

今でもたくさんありますが、

きっと昔は、もっともっと、たくさんありました。

医療はその歴史をたどれば「占い」に行きつきます。

祈祷や呪術に用いられた品々、それは今でいう所の薬と同じ扱いでした。

病を祓うための品物。

古い薬の一つに「酒」がありますが、酒は元来祈祷に用いられた道具です。

医療がちゃんと根拠を持つ形になったのはごく最近のことです。

それまでは今考えれば、医療とは程遠い、怪しいものばかりでした。

迷信や俗説。何これ?と思うような薬たち。

今よりもずっと多く、その何十倍も、何百倍もあった。

そして、一つずつ淘汰されていった。

時代とともに、怪しいものたちは自然と無くなっていきました。

その結果、効果のあるものだけが残り、

今私たちが目にしているのは、

淘汰という何重ものフィルターによって、濾過されてきた薬たちです。

理由は分からなくても、なぜか効果はある。

今の漢方は、歴史を経ることで、

そういう生き残り続けた品々によって、支えられています。

ここまで、東洋医学のお話です。

なんて事はない、皆さん分かりきっているお話です。

神秘的というイメージ、不思議というイメージ、

少なからず東洋医学にはそういう印象がある一方で、

今でも残っているものに関しては、どこかで薬として認められている印象もあります。

迷信から、医療へ。

不確実なものから、確かなものへ。

ただ、このお話、

なにも、東洋医学だけに言えることではありません。

西洋医学も同じ。

昔は、とんでもない医療がたくさんありました。

漢方と同じです。そんなことをしていたの?という医療。

例えば注射鍼の使いまわしによる肝炎。

強い薬による重篤な副作用。

時に人を生かすべき医療が、人命に牙を向いてきた。

枚挙にいとまなく、そういう歴史が西洋医学にもあります。

しかし、その時々の医療を責めることはできません。

なぜならば医療は、西洋・東洋を問わず、

歴史を経ることでしか・・・・・・・・・・成熟することが出来ないから・・・・・・・・・・・・・です。

私たちはまず、

現代に生きていることを、「幸運」だと思うべきです。

昔は治らなかった病が、西洋医学の進歩により治るようになった。

今まで出来なかった治療が、歴史を経ることで出来るようになってきた。

効果と安全性、それが時間とともに成熟されてきたという事実。

そしてそれは、漢方も同じです。

淘汰というフィルターを通ってきたからこそ、

安全で、現代においても意義のある、漢方薬が用意されています。

医療が世の中にフューチャーされる時、

往々にして、その多くが問題として話題になります。

薬害や、医療ミス。

あってはならないことです。防ぎ得ることも多かったと思います。

ただその裏で、その他さまざまな分野で、

医療は昔にくらべて、確実に進歩し、多くの患者さまを救っています。

西洋医学も、東洋医学も、医学である以上は歴史が成熟させる。

だからこそ、私たちは幸運です。

歴史を勉強していると、客観的にそう感じます。

臨床を行っていると、実感としてそれを理解できます。

現代に生きるていることの、ありがたさ。

そしてこれはきっと、医療だけのことではありません。

私たちはきっと、現代に生きているだけ・・で、

さまざまな側面で、「幸運」なはずです。



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※コラムの内容は著者の経験や多くの先生方から知り得た知識を基にしております。医学として高いエビデンスが保証されているわけではございませんので、あくまで一つの見解としてお役立てください。

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