東洋医学と冷え。
東洋医学の歴史上、最古の病原をあげろと言われれば、
それは「冷え」です。
当時、今のような暖房器具もなく、当然電気もない。
今私たちが感じている冷えとは比べ物にならない「極寒」が当時にはありました。
そのため「冷え」は人の命を脅かすものとして重視され、その治療方法がたくさん編み出されてきました。
その手法を述べた『傷寒論』は、読んで字の如く「寒に傷られた病」と書きます。
実際には風邪のような感染症治療を述べたものではありますが、
この名称一つをとっても、いかに「冷え」が体を害するのか、
当時の思想を垣間見ることができます。
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時代は変わり、人は賢くなりました。
様々な発明により、昔に比べて生きやすくなりました。
そして「冷え」はそこまで人体を蝕むものではなくなってはきましたが、
だとしても私から見ると、やはり「冷え」は人体を急速に病ませる要因の一つです。
むしろ、昔とは違う形で人体に影響を及ぼすものになっているという印象があります。
単に冷える、単に寒いという単純な侵襲の仕方ではなく、
温かい状況があるからこそ、急激に冷える状況が増えている。
さらに通常乾燥するはずの冬が、昨今は低気圧とともに、重い湿気をはらんだ冷えを発生させるようになりました。
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先週、「ここ10年に一度の寒波」と呼ばれる強力な低気圧が発生しました。
日本列島の半分を覆い尽くす重い雪雲。
雪の降る町でもそうでない場所でも、
非常に多くの患者さまたちが、体調悪化を自覚されました。
さらに一見晴れてきている現在においてもなお、
未だに体調の乱れが継続してしまっている方がおられます。
特に治療を始めて間もない方では、
体調の安定までが非常に長引き、辛い思いをさせてしまっています。
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今回の低気圧、それによって起こっている症状をまとめると、
まずは胃のもたれや胃痛、食欲の低下や吐き気があげられます。
冷えに低気圧が絡むと、その影響は胃を直撃します。
胃は全身症状を改善する上での要となる部位なだけに、この影響は無視ができず、如何ともし難い所です。
さらに、気持ち・精神面での影響も、ものすごく強い。
不安感や焦り、ソワソワ感を筆頭に、
どうしようどうしようと、気持ちが落ち着かなくなってしまう症状が全国的に多発しました。
また、当然低気圧が引き金になって起こりやすい症状である、
頭痛や耳鳴り、動悸や息苦しさ、不眠や疲労倦怠感・体のだるさも同時に多発しています。
可哀想なのが、これから受験を控えている学生さんたち。
せっかくテストを受けられるまで体調が回復してきたところで、
本番前のこの影響は、本当に辛い所だと思います。
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とはいえ天気による影響は、必ず回復へと向かいます。
天気は一日として同じ日はなく、必ずまた変化するからです。
なので、まずは安心してください。
先週の影響が抜けてきている方も、徐々に増えてきました。
新年あけた後は、毎年必ず冬の低気圧がやってきます。
しか今回、こんなにも強い影響を及ぼすとは。
10年に一度の寒波というのも、身に染みて納得します。
桂皮・乾姜・当帰・細辛あたりでただ温めれば良い、という「冷え」ではなく、
より自律神経の乱れを解した、複雑な病態を引き起こす昨今の「冷え」による影響。
『傷寒論』を基本とした病治の原則に加えて、
さらに考察の余地がある新たな「傷寒」。
現代に生きる我々だからこそ紐解かなければならない。
近年、そういう難しい状況を今、迎えていることを実感します。
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