突然ですが「義務教育」の話。
小学校・中学校の義務教育で習うこと。
その知識の多くが大人になってからほとんど使わない・意味がないと、
そう思っていらっしゃる方、多いと思います。
本当にそうでしょうか。
いや、意味があると胸を張って言いたいわけではないのです。
ただ以前、TVか何かの討論番組で、
「古文・漢文」は必修科目じゃなくても良いのではと、
そんなことが議論されていたことがありました。
興味深く見ていたら、
結局「必要ないかも」という流れになっちゃった。
ちょっと腑に落ちなかった私・・・。
そこでこの場を借りて、私自身の考えを徒然と述べます。そんな今回のコラム、お時間がある時にでも。
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というのもこの話、
その根っこにあるものは、漢方に関わる話だと感じているのです。
名医と呼ばれる漢方家であれば、
皆一様にその大切さを、その意味を理解しているように思えます。
それは「古文・漢文」を知らないと、昔の漢方の本が読めないからとかそういうことではなくて、
臨床において最も必要な知識とは何か、
ひいては人生において最も役に立つ知識とは何か、
そういうことを理解しているかどうかの問題だと、私は感じるのです。
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人生において最も大切な知識とは何か。
それは「選択」するための知識。
私はそう解釈しています。
人生は常に選択の連続で、
その積み重ねで人生が変わる。
大なり小なりの選択肢を無数に選び続けるというのが人生で、
極論を言えば、良い人生とは良い選択が出来た人生だと、言えるのではないでしょうか。
だとするならば、
より良い選択を行うための知識こそが、人生においては必要です。
良い選択を行うための能力。それこそが人生に必ず求められ、かつ早くから身につけるべき能力だと私は思うのです。
では、その力とはいったいどうやって身につくのでしょうか。
例えば仕事を決める時、
後悔の無い仕事を選択するためには、多くの知識が必要になります。
数学や英語なんかは実用的です。時には政治・経済の知識も必要になるでしょう。
しかし、もしこれらの知識が沢山あったとしても、
人はそれだけで選択を行うことはできません。
そういう実用的な知識だけでは、絶対に選択することができない。
なぜならば人には「感性」があるからです。
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物事を選択する際には、必ず「感性」がつきまといます。
実用的な知識だけで選択することは、実は非常に難しい。
何となくこれは嫌だな、
そういう感覚が、多かれ少なかれ必ず選択に影響を与えるからです。
どんなに頭が良く、知識に長けていたとしても、知識だけで行動することが人にはできません。
人はまず、感覚で物事を判断します。感覚の方が、思考よりも早いからです。
知識の多い方は、受けた感覚を多角的に判断したり、正当化する能力は高い。
しかし、必ず思考の前に感覚がやってくる。
だから知識だけで、物事を選択することはできません。
人の意見を否定する時は、まず否定したいという感性が、必ずその土台にあるはずです。
思考の方向性を決めるのが感性。知識の土台として、感性は必ず、関与してしまうものなのです。
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選択は知識だけではできません。
もっと有機的な、もっと理屈では言えないような、
そういう「感性」としか言えないようなものが、多分に関与することで選択は行われています。
では、人が選択を行う時に、持たなければいけない能力とはいったい何か。
それは感性を磨くこと。
さらに言えば、
その実態は多分、「美意識」です。
これ何かいいな、これ何か嫌だな。
その感性を左右するものはおそらく、人がそれぞれもつ「美しさ」の尺度です。
そして、この尺度は育ちます。
始めは稚拙な美意識も、美しいものに触れて感動し、時には嫌だなと思うものに眉をひそめて、
そうやって繰り返し「美」の事線に触れ続けて、
美意識は育ち、はぐくまれていくものです。
この世の中には沢山の「美」があります。
いろいろな場所に、さまざまな美しさがあります。
そしていろいろな時代にも「美」がある。
たくさんの「美」が折り重なることで、私達が生きている今があります。
我が国には他に類を見ない特別な「美」があります。
もしかしたら、日本人だからこそ感じやすい「美」なのかも知れません。
そういう学問に、早くから触れていることは、意味が無いことなのでしょうか。
始めはただの漢字の羅列が、
ある時から人の心や自然の情景に想えてきたら、
それは意味がないことなのでしょうか。
「美」を感じる力は、本当に必要のないものなのでしょうか。
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確かに義務教育には、社会生活において無駄と思えるものがあります。
しかし、そう思えるからこそもう一度考えてみて欲しい。
自分の「美意識」に、もう一度尋ねてみて欲しいと思います。
歴代の漢方家。
彼らは皆一様に「美」を解釈できる人たちでした。
なぜなら「古典を読む」とはそういうことだから。
そして「人を観る」こともまた、そういうことだからです。
人生で最も大切な能力とは。
あなたはどんな能力だと思いますか?