今日はちょっとだけ「生薬」のお話を。
中国に由来を持つ漢方薬は、なんだかんだと沢山の植物を薬として扱います。
しかも葉っぱ・茎・皮・花・根っこ・実・種に至るまで、様々な部位を使う。
部位によって薬効が変わったりもするのですよ。
面白いですよね。でもいったい、誰がどうやってその効き目を突き止めてきたのでしょう。本当に不思議です。
そんな中、何これ?と思うような生薬も沢山あります。
良く使われる「茯苓(ぶくりょう)」ですが、これ何かわかりますか?
いわゆる菌糸体ってやつなんですが、ようするに菌です。つまりキノコ。
しかも松の根っこに付いているやつ。
地中にあって外からは見えないわけで。よくもまあ、見つけましたねと。関心を通り越して唖然とします。松、掘り起こしたわけですから。
ただね、私が思うにです。
漢方の本当の凄さって、そういうことじゃあない気がするのです。
茯苓はそれほどでもないですが、生薬にはもっと見つけにくいもの、希少価値が高いものが沢山あります。
霊芝(れいし)とかカワラタケとか、冬虫夏草(とうちゅうかそう)とか。
しかしそれだから効果が高いというわけでは決してないのです。
希少価値や値段だけでは、全然判断できません。
むしろ、普通にある、ごく身近にある生薬にこそ、
その使い方によっては非常に効果的な薬能が備わっている。そんな所が本当の凄さだと、私は思うのです。
例えば「ショウガ」。
漢方では生姜(しょうきょう)とか乾姜(かんきょう)とか呼ばれたりするのですが、
非常に強力かつ効果的な薬になります。使い方を間違えなければ、です。
温める、という効き目が基本にはあるのですが、
でもそんなことだけじゃあない。ほてりを止めたり動悸を止めたり、時には痛みを止める要薬にもなります。
それに「シソ」。こいつもすごい。
然るべき使い方をすると、西洋薬に負けないくらいの即効性を発揮します。
昔から魚類の毒消しに使われていたのですが、
そんなことだけじゃあない。緊張を緩和させたり、興奮を落ち着けたり、時に向精神薬に負けないくらいの即効性を発揮したりもします。
ただやはり、使い方を間違えなければ、です。
つまりですね、漢方薬の凄さは、
使い方を突き詰めていった。そこにこそ、知恵の真髄があると思うのです。
漢方の聖典『傷寒論(しょうかんろん)』では、
当たり前に転がっているような生薬しか使っていません。
ショウガとかネギとか。ナツメとかシナモンとか。
後人に「貧乏人の医学」と揶揄されてしまうほどです。
でもだからこそ、本当の凄さがあると私は思うのです。
人は病気になると、特に難病におちいると、
普通の薬では無理だ、希少価値の高い薬が必要だと、思うものです。
でも違うのです。薬は希少価値ではないのです。
あくまで「使い方の妙」。
それが、思いもよらぬ効果を発揮するカラクリなのです。