■症例:産後の不調・むずむず足

By 2019年7月22日 コラム

患者さまの紹介だった。その方の娘さんである。

33歳。
話していると空気がぱっと明るくなるような、元気で溌剌とした方だった。

約半年前に第2子を出産した。
そして元気な赤ちゃんを産んだ後、足のむずむずが止まらなくなった。

不快なむずむず感のため夜も眠れない。疲れが取れず、日中すぐに横になりたくなる。
最近胃がもたれ、たくさん食べられない。とにかく毎日が、疲労困憊であるという。

そう話す患者さまは、内容とは裏腹に元気いっぱいである。

胃痛が起こるんです!そして便秘がち。足も冷えますね!でも寝汗も出るんですよ(笑)!
途中で笑い声が加わる。とにかく元気いっぱいだった。

お子様を二人抱えてのご来局である。
あやし、落ちつかせようとしている姿が大変そうだった。
元気いっぱいで症状を教えてくれる患者さまは、会話しながらも上の男の子から目が離せない。
そして男の子が小さな置物を触ろうとしたその瞬間、柔らかい口調から一転して「〇〇くん!ダメッ!!」と声を荒げられた。

この時、私は患者さまの状態がはっきりと理解できた気がした。

何てことのない、小さなお子様がいれば当然の光景である。
しかし、お体の様子を東洋医学的に把握しようとしていた私には、この時ある病態が着想できた。

人は疲労すると、当然つかれを感じて眠くなる。

しかしある病態を形成すると、身体が興奮を収める力を失ってしまう。

エンジンがかかりっぱなしになり、日常的に感じるべき些細な疲労感が感じられず、
全速力で日常を走り続け、もう走れないとエンストしそうになった所で、初めて体調不良を自覚するようになる。

この患者さまのお体には、明らかに興奮のスイッチが入りっぱなしになっていた。
家族に囲まれた苦しくも楽しい育児の中、体の些細な悲鳴を感じることなく頑張り続けた結果だった。

頑張りすぎだよ、そろそろしっかり休もう、
患者さまのお体に必要なのは、そういうシグナルだったのである。

私は身体の興奮を解除する薬方を出した。

始めは1週間分だけである。
先ず感じられたのは、お小水の出が増えたことと、熟睡感だった。

予想通りの反応を見て取った私は、同処方を継続する。

凡そ1か月後には足のむずむずが半分になり、
2か月後には足の冷えと浮腫みが取れるのと同時に、むずむず足は消失していた。

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確かに、人には頑張らなければいけない時がある。

また頑張ることが楽しく、それに喜びを感じる時だってある。

ただ、何かに向かって頑張っている時、人は自分の体に目が向きにくくなる。
できる、のではなく、できるけどしない、ということ。
今は頑張らない、ということが重要になる時も、実はたくさんある。

この患者さまは、現在遠方で生活されている。
きっと持ち前の明るさで、今も頑張っておられることだと思う。

そして出来れば、この時の経験を生かしていて欲しい。
体の声に耳を澄ませながら、朗らかな笑顔で頑張っていて欲しいと思う。

■病名別解説集:「産後の不調