□脊柱管狭窄症・椎間板ヘルニア ~漢方薬で治りやすい坐骨神経痛の特徴~

□腰部脊柱管狭窄症・腰部椎間板ヘルニア
~漢方薬で治りやすい坐骨神経痛の特徴~

<目次>

■坐骨神経痛 〜治しやすいもの・そうでないもの〜
■この状態であれば治りやすい ~坐骨神経痛治療の実際~
 ○温めると症状が楽になる
 ○動き始めがつらく、動いているうちに楽になる
 ○筋肉がしっかりとついている
■治療に時間のかかりやすい坐骨神経痛の特徴
 ●排便障害がある
 ●筋肉量が少ない
 ●食欲が無い・胃腸が弱い

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■坐骨神経痛 〜治しやすいもの・そうでないもの〜

現在、漢方薬における坐骨神経痛治療は、今までの手法に比べてその効果が飛躍的に良くなっているという実感があります。そしてそれと同時に、坐骨神経痛の中でも比較的治しやすいものとそうでないものとの差が分かるようになってきました

新治療において何故効果が発揮されやすくなっているのか、その理由は詰まるところ「血流を促し筋肉の状態が改善されるから」です。骨や椎間板の変形があったとしても、坐骨神経痛は血行が促されると緩和されてくるという傾向があります。漢方薬は身体をそのような状態へと導くことで効果を発揮していきます。

現在漢方の視点から見れば、腰痛や坐骨神経痛は決して緩和させることの出来ない症状ではありません。ただし新治療といっても全ての坐骨神経痛が迅速に改善するというわけではなく、中には難しい状態があることも確かです。実際の臨床においては、その見極めこそが大切になってきます。そこで今回のコラムでは「こういう状態があれば治しやすい」という点と、逆に「こういう状態があると改善までにかなりの時間を要する」という点との両方をご紹介していきたいと思います。

もし改善しやすい状態に当てはまる方がいらっしゃいましたら、是非漢方治療を検討してみて下さい。たとえ腰椎や椎間板に物理的異常があったとしても、そして神経ブロックや手術を行なったのにも関わらず治らないという方であったとしても、漢方治療により改善する可能性が非常に高いと言えます。

また改善しにくいという状態であったとしても、治療自体を諦める必要は決してありません。時間がかかったとしても改善へと向かうケースが実際にありますので、あくまで漢方治療の目安としてご参考にしていただければ幸いです。

治る可能性があるのに「そのことを知らない」という理由だけで痺れや痛みを我慢し続けている方は多いと思います。そのような方々にとって、的確な治療を行うためのヒントになって頂けたらと思います。また、今まで漢方治療を試したことがあるものの、あまり効果が無かったという方もいらっしゃると思います。特にそのような方にこそ、現実的な漢方治療をご紹介させて頂ければと思います。

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■この状態であれば治りやすい ~坐骨神経痛治療の実際~

まずは漢方治療によって比較的治しやすい坐骨神経痛をご紹介いたいします。

腰部脊柱管狭窄症や腰部椎間板ヘルニア、また変形性腰椎症などにおける坐骨神経痛は、症状にある程度の共通点はあるものの、実際には各病によって、また各個人によってその程度や質、また発生の状況などに細かな違いが見て取れます。

ご自身の症状を振り返ってみた時に、以下のような傾向があるかどうかを先ずはチェックしてみてください。これらの傾向が介在している場合では、漢方治療によって改善する可能性が非常に高いと言えます。もし病院にて手術しかないと言われてしまったとしても大丈夫です。漢方治療をお試しいただくことを強くお勧めいたします。

○温めると症状が楽になる

この状態があれば、第一選択的に漢方治療を行うべきだと思います。それほどまでに治しやすいサインが出ていると理解して頂いて結構です。実際には以下のように訴えられることが多いと思います。

・お風呂や温泉に入っていると楽になる。
・冷やすと悪化する。冷シップを貼ると逆に調子悪い。

例えばお風呂や温泉にて体を温めると楽になるというのは、明らかに血行が促された時に神経の通りが良くなるという証拠です。また冷やすと調子が悪くなるというのは、冷刺激によって血行が損なわれると痺れや痛みが悪化するということを表しています。則ち血行を促し、身体を温めるという漢方治療の十八番が非常に効きやすい状態であると言えます。

漢方薬にて実際に起こし得る効果の一つが「温める」ということです。的確な漢方薬を選択することが出来れば、服用後即座に身体が温まる感覚を覚えるということも少なくありません。坐骨神経痛は一般的に加齢と伴に発生してきやすい症状ですが、この要因の大きなものの一つが血行障害です。血行循環が損なわれることで様々な組織に熱と栄養とが行き渡らなくなります。そして神経や骨、そして骨を支える筋肉が乾燥し劣化したゴムのように硬くなり、坐骨神経痛が発生しやすい状態を形成していくのです。

○動き始めがつらく、動いているうちに楽になる

坐骨神経痛による痺れ・痛みはその発生の状況に様々な違いがあります。動き出しは問題ないが、立ったり歩いたりしているうちに痺れや痛みが強くなる方(これを間欠性跛行(かんけつせいはこう)といいます)、逆に動き始めはつらいが動いているうちに楽になるという方がいらっしゃいます。漢方治療が比較的迅速に効果を発揮していきやすい状態は後者、つまり「動き始めがつらい」というタイプです。この表現以外にも、患者さまは以下のように訴えられることがあります。

・朝が一番つらく痺れ・痛みが強い。日中楽になる傾向がある。
・座って立つなどの動作がつらい。
・歩き始めはつらいが、歩いているうちに痺れ・痛みが引いてくる。

私の経験上、このようなタイプの方は漢方治療によってスムーズに改善していく傾向があると言えます。漢方薬は血行を促し、筋肉の状態を是正することで坐骨神経痛を改善していきます。動き出しがつらく動いているうちに楽になるのは、筋肉への血行循環が促され始めると楽になると考えられることから、漢方治療が効果を発揮しやすいのではないかと感じています。

ただし的確な漢方薬を選択出来ているということが条件になります。血行状態は人によって千差万別です。その差を見極める理こそが漢方です。したがって一律的な処方運用だけでは、せっかく治しやすい状態であったとしても改善へとは向かいません。

間欠性跛行(かんけつせいはこう)について
腰部脊柱管狭窄症では通常、間欠性跛行という症状が発生してきます。これは動き出しは良いが、動いているうちに痺れや痛みが強くなるという症状です。このような間欠性跛行が生じている場合は、動き出しのみ痛いという状態と比較して効果発現までに時間がかかるという傾向があります。

脊柱管狭窄症において起こる間欠性跛行は、姿勢により症状が発生したり治まったりします(※1)。つまり変形した骨による神経の圧迫という原因が強く関わっているという印象です。したがって血流を促すだけでなく、姿勢の改善や骨を取り巻く筋肉の状態を改善して骨に負担がかかりにくい状態を目指すということが重要になります。したがって漢方治療と共に適切な体操やストレッチなどを平行して行っていくことが大切になってきます。

ただし間欠性跛行においても、血流状態を維持しておくということは改善のために必要なことです。神経の圧迫があったとしても充分に栄養が保たれた状態であれば伝達が行われやすくなります。効果の実感までに比較的時間のかかりやすい状態ではありますが、腰を据えた漢方治療を行っているとある程度のところで急に改善へと進みだすという印象があります。したがって正しい養生を知り、漢方薬をもって血行を促せば、順調に回復してくるということもまた多いものです(※2)。

(※1)脊柱管狭窄症に伴う間欠性跛行は、直立している状態で発生し、前かがみになると楽になるという特徴があります。したがって立ち止まったとしても直立していると症状は継続し、椅子に座ったりしゃがみ込んだりすることで症状が初めて楽になります。

(※2)間欠性跛行には2つのケースがあります。脊柱管狭窄症にて変形した腰椎が神経を圧迫することで生じるものを神経性跛行と呼びます。一方、動脈硬化などによって下半身の血管に充分な血液を送ることができなくなって生じた状態を血管性跛行と呼びます。血管性跛行は姿勢に限らず歩くのを止めれば症状が消失し、下肢に冷感を感じたり片側性でふくらはぎより下に症状を呈しやすいという特徴があります。両者は基礎となる疾患も別物ではありますが、血流状態が悪いために間欠性跛行が生じているということは共通であり、神経性跛行であったとしても血流を促すという治療が必要であることは確かなことだと実感しています。

○筋肉がしっかりとついている

身体において血流を促す中枢は筋肉です。したがって状態が良い筋肉、そして充分に容積のある筋肉は、それがあるだけで血行を促しやすい状態を備えていると言えます。したがって比較的若い方の方が治しやすいという側面があるのと同時に、お年寄りであっても筋肉がしっかりとついているかどうかは、漢方治療を行う上で非常に重要な要素となります。筋肉量の少ない方に血行を促す効果の強い漢方薬を使うと、手足の火照りが強くなったり、動悸や寝汗を生じさせたりするケースが出てきます。つまり筋肉量の多い方ほど積極的に血行を促すことが出来るという側面があり、その点からも筋肉がしっかりとついているかどうかは大切な指標となってきます。

ただし、すでに坐骨神経痛を発症している方では、無理な筋肉トレーニングは禁物です。筋肉はトレーニングによるダメージに対して、それを自己回復する身体の力を利用することで発達します。すでに坐骨神経痛を発症している方の多くは、筋肉の弱りが継続しているために発生しています。したがって回復力の弱い筋肉の状態で無理なトレーニングを行うことは、ただ筋肉を傷つけているということに過ぎません。自分の筋肉の状態に合った正しいトレーニングをすることが重要で、おかかりの医療機関に的確なストレッチ・トレーニングの方法を教えてもらうべきだと思います。

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■治療に時間のかかりやすい坐骨神経痛の特徴

それでは最後に、基本的に長期的な漢方治療を行わなければならない傾向があるという状態をご紹介いたします。どの程度時間がかかるのか、そして完治にまで向かうのかは、非常に個人差が大きいためハッキリこうだとは言えない部分があります。ただし以下のような状態であれば一カ月や二カ月で改善するということは難しいケースが多いと思います。完全が不可能というわけではありませんので、腰を落ち着けた治療を覚悟しながら、的確な治療を行うことが重要だと思います。

●排便障害がある

主に腰部脊柱管狭窄症において見られる症状です。脊髄の先端部にあたる馬尾神経(ばびしんけい)を圧迫すると、両足に症状が出やすくなります(馬尾型)。またその状態がさらに悪くなると、足の脱力感が出やすく、かつ会陰部(股の間)のしびれ感や頻尿・残尿感・尿失禁・便秘・下痢・便失禁が起こることがあります。この状態にまで移行しているということは、それほどまでに神経の伝達が悪くなっているということでもあります。漢方治療に関わらずこの状態までいくと、治療としては長期戦を覚悟する必要が出てきます。

●筋肉量が少ない

漢方治療特有の見極めだと思います。人は加齢において血行障害が助長されてくると、手や足のひら、さらに背中などが熱くなるという状態を起こすことがあります。主に夜間に起こることが多いこれらの症状は、筋肉量が少なく、枯れたような体形の方に起こりやすい傾向があります。この状態があると、積極的に血流を促す治療が行いにくくなります。漢方薬の力を制御しながらの治療が必要になり、その分治療が長期的にかかりやすいという印象があります。

時間のかかる傾向こそありますが、実はこういう方こそ漢方治療を行う必要があります。筋肉量が少ないという方に生じやすいこの傾向は、どのような治療を行うにしても改善までに時間がかかる傾向があります。むしろ漢方治療にて血行を促し、筋肉の状態を回復させておくことが必要で、あらゆる治療のベースとして漢方薬を服用しておくべきだと思います。

●食欲が無い・胃腸が弱い

消化機能と血行とには密接な関係があります。胃腸は巨大な筋肉量を備えた血流のエンジンルームです。したがって胃腸機能が弱く食欲が無い・または細いという方は、それだけ血行障害起こりやすい状態を形成しているということでもあります。

治療に時間が必要なケースではありますが、むしろこの場合も漢方治療を行うべき状態です。西洋医学的な治療、つまり痛み止めや血管拡張剤の内服、また手術といった手法の効果発現は、身体の胃腸機能や体力に必ず依存しています。どのような治療を行うとしても、体力がない・胃腸機能が弱いという方では、まずは漢方薬をもって消化管の活動を是正すると同時に血行を促すという手法を検討するべきだと思います。



■病名別解説:「腰痛・足の痛み・しびれ(脊柱管狭窄症・腰部椎間板ヘルニア・ 坐骨神経痛など)
□コラム:「□脊柱管狭窄症・椎間板ヘルニア ~坐骨神経痛への新たな漢方治療~