□酒さ・赤ら顔 〜なぜ温度差でのぼせるのか?ほてり体質者の特徴〜

■季節の変わり目に悪化しやすい病「酒さ・赤ら顔」

当薬局にてご相談の多い病である酒さ・赤ら顔。治療により症状が安定している方でも、決まって不安定になりやすい時期があります。冬のはじめや春、つまり季節の変わり目です。その理由にはいろいろな要因が考えられますが、自覚的に最もはっきりと感じられるきっかけは気温・室温の「寒暖差」です。

冬に電車に乗った時や、デパートの中に入った時など、急に暖房のきいた部屋に入ると顔がぽーっと赤くなることがあります。特にもともと赤ら顔になりやすい方や、酒さ様皮膚炎を持つ方では、この火照(ほて)りが強力に起こってしまいます。漢方治療によって症状が安定している方であっても、このような急激な寒暖差を受けるとどうしても顔の火照りが発生してしまいます。そのため赤ら顔でお悩みの方は、冬や春は苦手な時期・苦しい時期と感じられている方が多いと思います。

なぜ寒暖差によって火照りは強くなってしまうのでしょうか。実は酒さ・赤ら顔治療においては、この理由を理解しておくことがとても重要です。

そもそも寒暖差により顔が火照ることは誰にでも起こることです。したがって漢方治療によって顔がまったく赤くならないという状況にまで導くことは、なかなか難しいという現実があります。しかし寒暖差による火照りのメカニズムを理解しておくと、日々の生活の中で気をつけるべきことが見えてきます。つまり自分自身の養生によって、火照りを生じにくい状態へと導いていくことが可能になるのです。そして漢方治療とその養生とを並行して行うと、火照りがほとんど気にならないという状態にまで、スムーズに改善していきやすくなります。

■寒暖差による火照りのメカニズム

寒暖差により顔が火照ってしまう理由、それを解説するにあたって今回はなるべく東洋医学的用語を使用しないで説明していきたいと思います。陰・陽といった東洋医学的用語を使うと、どうしても漠然とした印象だけで終わってしまいます。よりイメージしやすく、より理解しやすい、できるだけそういう説明ができるように配慮しながら解説していきたいと思います。

1.自律神経による血行調節

人体は外気温の状況に合わせて自らの体を変化させます。暑い所では暑い場所に適した体に、そして寒い所では寒い場所に適した体に変化します。この働きは自律神経によって調節されています。そしてこの自律神経の働きの中に、寒暖差による火照りのメカニズムの全容が隠されています。

人体は冷えた場所に身を置くと、自らの体温を保とうとして自律神経が自動的に働きます。具体的には自律神経が血管に働きかけます。血管を緊張させることで熱を体内に閉じ込めようとするのです。熱を運ぶ血管をギュッと締めることで体温を逃さないようにしている、そう捉えるとイメージしやすいと思います。反対に暑い場所に身を置くと、自らの体温を外に逃がそうとします。そのため今度は自律神経が血管の緊張を解き、血行をゆったりとさせることで体温を外へと開放します。

つまり寒い場所から急激に暑い場所に身を置くと、自律神経による血管活動を介した体温の開放が急激に進みます。体内に閉じ込めようとしていた熱が外へと急激に開放されることで、身体の末端に血行が導かれるわけです。特に熱は上に導かれる性質があるため、この開放によって血行が頭部に向かいます。すると顔がぽーっと火照り赤くなる、これが寒暖差による面部の火照りのメカニズムです。

2.火照りの原因・血管の緊張と弛緩との落差

このメカニズムは誰しもに起こることです。しかし寒暖差により顔が赤くなりやすい人と、そうでない人とがいます。この違いはどうして生まれるのでしょうか。次のステップではこの点を説明してみたいと思います。

顔が赤くなる人は、それだけ血管緊張の開放が強く行われていることを意味します。言い方を変えれば、血管の弛緩が強く起こっているということです。血管の弛緩が強く継続して起こることで面部の血行が滞り、そこに溜まってしまっている状態です。すなわち顔が赤くなるということは、一時的に血管の過剰弛緩を介した面部の血行不良が起こっているわけです。

では、なぜ血管の弛緩が強く起こってしまうのでしょうか。その理由は自律神経活動の落差に起因しています。

自律神経活動の落差、つまり血管の緊張と弛緩との落差が激しいほど、血管の弛緩が強く起こります。血管が強く収縮している状態から、急激に弛緩へと向かうことで、一時的にちょうどよい緊張のバランスを保てなくなるわけです。弛緩した状態で一時的に麻痺しているようなイメージ、つまり強く急激に弛緩したことで、そこから再び緊張を取り戻すために時間がかかっている状態です。すなわち寒暖差が激しいほど、血管の弛緩は強く起こります。緊張と弛緩との落差が激しければ激しいほど、このような緊張度の低下状態が長引きやすくなるのです。

3.大きな落差が起こってしまう体質とは

さて、ここからが本題です。寒暖差により顔が火照る原因、それは緊張と弛緩との落差が大きいこと、そして弛緩した状態から適度な緊張を取り戻すまでに時間がかかっていることに起因すると解説してきました。これをもとに考えると、火照りを強力に生じやすい体質の方の本質が見えてきます。

寒暖差による火照りの原因は、緊張と弛緩との落差です。すなわち強く緊張している状態であるほど、そこから弛緩へと向かったときに火照りは強く起こります。では寒い場所で人よりも強く緊張を起こしやすい人とは、いったいどのような人でしょうか。

寒い場所で強く緊張しなければならない人、それはもともと体に冷えを持っている方です。体内が冷えているために、寒い状況において人よりも強く緊張しなければ熱を保持できないわけです。そして冷えが起こりやすいということは、そもそも身体に熱を保持する力が弱い人ということになります。すなわち、もともと血管が弛緩しやすく、熱を体内に保持しにくい人、それが火照りを生じやすい人ということです。

平素より血管の緊張度が弱く、体内に熱を保持しにくい人は、寒い状況で自らの熱を保つために人よりも強く緊張しなければなりません。強く緊張するからこそ、その後温かい部屋に入ったときに弛緩へと強く向かってしまいます。さらにその落差によって弛緩が強まった血管は、もともとの緊張度が弱いために、さらに深く緊張度を失ってしまいます。そのため再びもとの緊張度に回復しにくく、いつまでも面部に充血を生じて、強く、長く、顔が赤くなってしまうわけです。

■火照りやすい体質者の特徴「気をつけるべき体のサイン」

つまり、寒暖差により顔の火照りを生じやすい体質とは、

〇平素より血管の緊張度が弱く、体内に熱を保持しにくい方
〇そのため体内に冷えを持つ方

以上のようにまとめることが出来ます。このような方はもともとゆったりとした生活を好む傾向があります。どちらかと言えば朝が弱く、夕方から夜にかけてエンジンがかかり始める方。夜はいつまでも起きていられるという方もいます。血管の緊張度が弱いために、起きた時の体の「立ち上がり」が弱いというイメージです。そのため朝が弱く人よりもエンジンがかかるまでに時間がかかります。しかし一旦エンジンがかかり始めると、そのブレーキをかけるまでにも時間がかかります。すなわち血管活動の緊張と弛緩との切り替えが「緩慢」で、外の状況に合わせて機敏に対応しにくいという印象があります。

これは一種の体質的傾向ですので、それだけで病であるというわけではありません。しかしこのような体質の方は、この状況を助長するような生活を送ってしまうと、自律神経が乱れやすい状態を形成してしまいます。自律神経の働きが普段から緩慢なために、人よりも頑張って外の状況に対応しなければならない、そのため緊張・興奮の振り幅が大きくなり、気づいた時にはリラックスするスイッチが入りにくくなってしまっている。そういう状況が作られやすくなるのです。

顔の火照りや赤さ・のぼせ以外にも、特に以下の症状に気を付けてください。このような体質者が緊張・興奮状態を生じ、それが自分ではなかなか解除しにくいという状況に陥った時に、以下のような症状が発生してきやすくなります。

・不眠
・動悸
・息苦しさ
・めまい
・疲労倦怠感、体のだるさ
・胃もたれ

これらの症状は体のサインです。体が緊張とリラックスとのバランスが乱れているということを、私たちに教えてくれているわけです。もしこのような症状を自覚している場合には「あ、私は今リラックス出来なくなっているんだ」と思ってください。そしてこのような症状が出ている場合には、すでに自分では解除しにくい段階に入ってしまっています。治療を行う必要がありますので、漢方専門の医療機関にご相談頂くことをお勧め致します。

■火照り体質者に必要な生活の養生へ

今回は「なぜ寒暖差によって顔が火照るのか」という点から、「顔の火照り・赤味・酒さを起こしやすい体質とは何か」を解説してみました。この内容は私自身が漢方治療を通して実感していることから紐解いた解釈です。すなわち実験や研究などで立証されていることではありませんので、あくまで一つの考え方として理解していただきたいと思います。ただし現実的にこのような体質的傾向を想定しながら、その傾向を悪化させない方向へと治療を進めると、赤ら顔や酒さは改善へと向かいやすくなります。そういう臨床の現実から導きだされた考え方として、お顔の症状にお悩みの方の一助となって頂ければ幸いです。

さて、このお話には続きがあります。「赤ら顔・酒さを起こしやすい体質」を解説したところで、次はどのようにしてこの体質を治していくか、というお話をしたいと思います。使用する薬方や具体的な治療に関しては、■病名別解説「酒さ・赤ら顔」をご参照ください。次のコラムにてお話したいのは、どうやって、自分の力で、顔の赤くならない体質を作っていくのか。つまりとても重要な「生活の養生」のお話をしたいと思います。