□酒さ・赤ら顔 ~ほてり体質者と気をつけるべき生活の養生~

■火照りにくい体質にしていくために「必要な養生」

火照りを起こしにくくするために、ご自身で日常的に何を気を付けるべきなのでしょうか。赤ら顔・酒さを治療していく上で生活の症状は大変重要です。改善していくための必須項目といっても良いと思います。前回のコラムでは、赤ら顔や酒さが起こりやすい体質とは何かをご説明しました。今回はそれを踏まえた上で、生活で何を気を付ければ良いの?というお話をしていきます。

その前に、少しだけ前回のおさらいをしてみましょう。ざっと説明するので、もし分かりにくければ前回のコラムをご参照ください。

※前回のコラム→□酒さ・赤ら顔 〜なぜ温度差でのぼせるのか?ほてり体質者の特徴〜

■「赤ら顔・酒さを生じやすい体質とは」前回のおさらい

赤ら顔・酒さを起こしやすい体質とはどのような状態をいうのでしょうか。ポイントは自律神経が行っている血管への働きかけにありました。血管は刺激に対する自律神経活動によってぎゅっと緊張して熱を保持したり、ふわっと弛緩して熱を開放したりを繰り返しています。そんな緊張と弛緩とを繰り替えす活動の中で、赤ら顔・酒さを起こしやすい方は、ある傾向を形成している方でした。

〇血管が弛緩へと傾きやすい方
血管の緊張度が弛緩へと傾きやすい方は、外からの刺激に対して人よりも頑張って緊張しなければならず、それにより緊張が解けた後に急激な落差をもって弛緩へと導かれてしまいます。そのため平素より緊張度の弱い血管が、弛緩へとさらに強く、長く、生じてしまい、顔面部の血行が滞って赤くなる。これが赤ら顔を起こしやすい方の特徴です。

〇体内に冷えを持つ方
また血管が弛緩しやすい方は、その分体内に熱を保持することが出来ず、体の芯が冷えやすくなります。すると体内が常に緊張してしまい、あらゆる刺激に対して敏感に反応しやすい状態を形成します。すると、そのことによってさらに強く緊張し、結果として緊張と弛緩との落差が大きくなり、のぼせを助長させてしまいます。

〇つまり血管活動の「緩慢」さが火照りを作る
要するに、顔が火照り・のぼせやすい方というのは、外からの刺激に対して敏感であるという特徴があります。その理由は体内の冷えですが、それが起こってしまうそもそもの原因は、血管の緊張度が弱く、刺激に対して俊敏に対応することが出来ないという「緩慢さ」にあるのです。刺激に敏感になっている原因が「緩慢さ」にあるという解釈が少し難しいかもしれませんが、すなわち「もともと刺激に対して緩慢で、俊敏に対応することができないからこそ、人よりも頑張って対応しなければならない。だからこそ刺激を受けると自律神経のふり幅が大きくなって安定せず、その影響をいつまでも体に残してしまう(つまり過敏になる)」というような状態だと考えると分かりやすいと思います。ガスバーナーから勢い良く火を出すほど、炎は安定して風の影響を受けません。火を弱めると炎の出かたは緩慢になります。そして風に対してボワッボワっと敏感かつ不安定に火が躍る。例えるならばそんな状態がお体に起こっているわけです。

この刺激に対する敏感さ・不安定さを改善するためには、体を「そんなに緊張しなくても良いよ、敏感に反応しなくても大丈夫だよ」という状態に導くことが必要です。そして緊張してしまっている理由は、刺激に対して俊敏に対応することができない「緩慢さ」、つまり血管緊張度の弱さと体内の冷えとにあります。つまり血管の緊張度をさらに弱めてしまうような生活や、体内の冷えを助長してしまうような生活は、このような体質をさらに悪化させてしまいます。体の芯を温め・血管の緊張度を増し、いかに刺激に対して俊敏に対応できる体作りをしていくのか、これが赤ら顔・酒さ治療において重要なポイントになってくるのです。

■生活の中で気を付けて頂きたいこと・運動・食事・睡眠と火照り

それではいよいよ、赤ら顔・酒さを起こしやすい体質をどのように改善していったら良いのか、その具体的な養生を説明していきたいと思います。血管の緊張度が弱く、もともと弛緩させやすい方が、それを助長させ、悪化させてしまう生活とは何か。これをやってしまうと悪化しますというポイントがあるので、その点を解説していきたいと思います。

1.筋肉活動の重要性・運動不足と酒さ赤ら顔

今まで説明してきた通り、赤ら顔・火照りの原因は、自律神経の働きが普段から緩慢な点にあります。血管が弛緩しやすく外の状況に素早く対応できない緩慢さによって、面部の充血を生じやすい状況を形成しています。したがって日常的にこの緩慢さを助長していしまうような生活を送っていると、火照りを生じやすい体質がさらに深まってしまいます。一日中ゴロゴロしている、座ってぼーっとしていることが多い、こういったメリハリの無い生活こそが血管活動の緩慢さを強めてしまいます。

つまり生活にちゃんとメリハリを持たせることが非常に大切です。具体的には筋肉をちゃんと使うこと。運動不足が火照りを悪化させる原因になります。人体において筋肉は、血行を促し熱を産生する最大の器官です。日常的に充分な筋肉活動が行われていると、それだけで血管の緊張度が高まり、冷えに強く血行状態の良い体に生まれ変わることができます。俊敏な自律神経は適度かつ十分な運動により培われる。この原則を是非とも覚えておいてください。特に下半身を鍛えることが効率的です。そしてウォーキングやランニングもお勧めですが、火照りにおいては特に水泳がお勧めです。水による適度な冷刺激を受ける中で体をしっかりと動かし血流を良くする。こういうトレーニングを日常的に行っていると、急激な寒暖差に対しても不安定に変化することのない体へと変化していけます。

2.満腹まで食べないこと・胃腸への負担と酒さ

食後に酒さや顔の火照りが悪化しやすいという現象は、まさにこのような血管緊張度の弱さを持っている方に散見されます。胃腸が動くと身体は血管を弛緩へと導く副交感神経を働かせます。平素より血管が弛緩しやすい方は、食後の副交感神経の立ち上がりによって、弛緩状態を強く発生させてしまうことで顔や体表面の火照りや熱感を発生させてしまいます。すなわち、血管が弛緩傾向に傾きやすい方は、大食に注意しなければなりません。お腹いっぱいまで食べたり、消化に時間のかかるような物を食べると、副交感神経が優位に働きすぎてさらに弛緩を助長させてしまいます。

日常的に食事は腹八分目を守りましょう。また早食いもダメです。急激に副交感神経を働かせると、弛緩への落差を大きくしてしまいます。ゆっくりとよく噛んで、時間をかけながら食べることが大切です。さらに間食も控えるべきです。胃腸を絶え間なく動かしている状態は、弛緩しやすい体質へ向かうためのトレーニングをしているようなものです。食事もメリハリを持って取る、そうすることで自律神経もメリハリを持った活動が行えるようになるのです。

そして当然、身体を冷やす食事は火照りを悪化させます。冷えた物を食べるというのは、体の芯を直接冷やす行為です。消化管が冷えるとそれだけで身体は緊張しやすくなり、自律神経のふり幅を大きくしてしまいます。寒性の食品・温性の食品など細かくいうと食品によって冷やす・温めるの違いがありますが、とりあえずそれは置いといて、冷たいものを食べないでください。冷たい飲み物、アイス、特に冷蔵庫から出したばかりの果物などは、胃の中に氷を入れ込むようなものです。食事の養生はすぐにでもできることですので、是非これを見た今から頑張ってみてください。

3.睡眠不足は必ず酒さが悪化するという事実

日中はしっかりと活動する、そして夜はしっかりと眠る、これが行えてはじめてメリハリのある生活が行えるようになります。睡眠不足は血管活動のメリハリを失わせます。つまり日中頭がぼーっとしている状態と同じで、血管活動も緊張と弛緩とのメリハリを失い俊敏に動けなくなります。睡眠とは身体活動を休めることで、日中受けるであろう様々な変化に対して俊敏に対応できるように準備を行っている時間です。そういう時間が無ければ無いほど、身体は常にぼーっとした変化に対応しにくい状態を形成してしまいます。

また睡眠は日中受けた損傷を回復する唯一の時間でもあります。つまり皮膚は夜間寝ている間にしか回復しません。したがって睡眠時間を削るということは、皮膚が回復する時間を削っているということと同じで、睡眠不足は必ずといって良いほど皮膚症状を悪化させる原因になります。

何時間寝れば良いのか、いつ寝れば良いのか、それらには個人差が大きい所だと思います。ただし少なくとも夜の12時(太陽が最も遠くに行っている時)には熟睡していた方が良いと思います。また出来るだけ6時間以上、さらに朝起きた時に良く寝たと思える時間の睡眠をとって頂くことが理想です。お仕事が忙しくなかなか睡眠が充分にとれないという方もいらっしゃるかと思います。ただしこの飽食の時代であれば、夕食を削ってでも睡眠時間を確保するべきであると、私自身は感じています。

■薬の必要ないお体を作っていくために

どうでしょうか。赤ら顔・酒さを改善していくための生活の養生をご説明してみました。「運動・食事・睡眠」、結局のところ当たり前のことだと感じられた方も多いと思います。

ただし、臨床の経験から導き出した解答として、これが最も重要な養生です。なぜならば、赤ら顔・酒さを引き起こす原因の中で、これらが最も改善可能なものだからです。ストレスでも悪化します。でもストレスは取り除けません。生まれながらの体質も関係します。しかし生まれる所からやり直すことはできません。ご自身の体にとって「今後実際に変化させることが可能なもの」、それが治療においては最も重要な原因であり、そうでなければ養生にならないのです。そしてこれら気を付けるポイントが分かってくると、ゆくゆくは漢方薬を含めたあらゆる薬に頼らなくても、自分自身で酒さ・赤ら顔を改善していけるようになります。いつまでも薬に頼らず、自分自身で自分の体をコントロールできるようになる。そこまでを求めてこその治療だと思います。

そういう意味で、今回の養生については声を大にして皆さまにご説明したいと思います。当たり前のことである一方で、当たり前のことの重要性を再認識して頂きたいという思いから、今回養生というテーマでコラムを書いてみました。このような私の経験則が、お顔の症状にお悩みの方にとっての一助となっていただければ幸いです。



■病名別解説:「酒さ・赤ら顔