□隠れ膵炎 ~背中の痛みが肩に及ぶ 内臓からくる背中の痛みについて~

■どこで治療しても治らない背中の痛み・内臓からくるもの

背中の痛みを長く患っている方の中には、様々な医療機関で治療しているにも関わらず、なかなか良くならないという方がいらっしゃいます。内臓の失調が原因で起こる背中の痛み、それが見落とされているケースでは、こういうことが良く起こります。

一例をみてみましょう。
40代の男性、仕事はトラックの運転手。ずっと腰と背中あたりの痛みを気にされていましたが、長時間運転する職業のせいだと思われていました。整骨院や整形外科に通い、湿布や痛み止めを処方してもうことで何とか痛みをしのいできたそうです。しかしある時、痛みが激痛になります。脇腹あたりまで痛み、肩から首筋まで凝って痛み、ひどいと息が苦しくなって、吐き気をもよおし、頭痛まで起こるようになりました。

■検査では異常に気付きにくい

この患者さまは恐らく「隠れ膵炎」と呼ばれる状態です。膵臓は隠れた臓器と呼ばれています。エコー検査などで見えにくい(とくに腹部の脂肪が多い人で見えにくい)だけでなく、もし膵炎が起こっていたとしても、急性炎症でなければ血液検査でも異常値を確認できないことが多いからです。この患者さまも定期的な検査は受けていました。そこでは膵炎を指摘されてはいません。しかし次のような背景から「隠れ膵炎」の可能性があると考えられました。

■隠れ膵炎に当てはまる要素

・お酒を飲むと痛みが悪化する
・晩酌の傾向があり、お酒を常飲している。
・食後または、常にみぞおちのあたりが張る。
・冷え性で足首から下が特に冷える。
・痛みが左(左腰から左背中・左肩)に出やすい。
・お通じが安定しない(下痢や便秘)

隠れ膵炎ではこれらの程度が軽い場合も多く、その分見落とされがちではあります。しかしよくよく患者さまの生活を確認していくと、これらの要素を発見できることが少なくありません。この患者さまの場合では、飲酒後の悪化と、お酒の常飲、そしてみぞおちの張りと、足首から下の冷えが顕著でした。また背中の痛みが冷えた時に強くなり、風呂に入って温まると楽になるとおっしゃられていました。

■隠れ膵炎、その対応と漢方治療

患者さまが苦しまれてた背中の痛みは、内臓が原因となっている可能性が高いと判断しました。内科的により詳しい検査をしていただくことをお勧めすると同時に、漢方薬での治療をお勧めしました。膵炎は病院にてそう診断されても経過観察になることが多いものです。一方、痛みを止めるという意味においては、漢方にとても良い薬があります。急性炎症は起こしておらず、その代わりに長く漫然と痛みが続くケースにおいては、漢方治療を試してみるべきだと思います。この患者さまには、薬局内で一包服用して頂きました。

最初の感想は「体が温まってきた」でした。私はそういう薬を出しました。内臓の冷えを観てとったからです。いくら冷えを取る薬を出しても、実際に冷えてなければ温かいというリアクションは起こりません。一包服用後のリアクションを見て、私は2週間分の同処方をお出ししました。

2週間後、痛みが半分以下になり、体がかなり楽になったと教えてくれました。この漢方薬で痛みが楽になったということは、痛みの原因が内臓にあったということの証左でもあります。そこで絶対に必要になるのが、食生活の指導です。お酒の常飲・油もの過食・暴飲暴食をとにかく改善して頂きました。患者さまは時に吐き気をもよおすほどの激痛を起こしていました。こんな思いは二度としたくないというお気持ちから、患者さまは生活をしっかりと見直されました。

■隠れ膵炎に用いられる漢方薬

今回ご紹介した症例は、その一例にしか過ぎません。普通、背中が痛いなぁというくらいでは漢方治療をお求めにはなりません。当薬局には、すでに他の治療を行っていても良くならないという方が来られますので、このような隠れ膵炎の方が多いのかも知れません。

間違いがないように一点補足しておくと、ここで私が隠れ膵炎といっているのは、あくまで予測です。実際には病院にて膵炎の検査を詳しく行う必要があります。ただし内臓に効果のある薬を服用することで、背中の痛みが取れる場合があることもまた事実です。

背中の痛みの原因が骨や筋肉の問題ではなく、内臓から来ていそうだな・・。そう感じた時に出す漢方薬には、何種類かあります。したがってそれぞれの漢方薬の使い方を知っておくことが重要です。私の経験では、隠れ膵炎に関しては日本伝統医学にのっとった考え方、特にかつて「痃癖(げんぺき)」と呼ばれていた病への対応手法を学んでおくことが大切だと感じています。

使用する漢方薬には以下のようなものがあります。

〇四逆散加減(しぎゃくさんかげん)
〇延年半夏湯(えんねんはんげとう)
〇柴胡桂枝乾姜湯加減(さいこけいしかんきょうとうかげん)
〇柴芍六君子湯(さいしゃくりっくんしとう)
〇半夏瀉心湯(はんげしゃしんとう)
〇治肩背拘急方(ちけんぱいこうきゅうほう)

これらはほんの一部です。
漢方処方の詳細については、病名別解説に詳しく載せていますので、そちらをご参照ください。




■病名別解説「膵炎
■病名別解説「首・肩・腕の痛み・しびれ