◇養生の実際・夏
~夏場の養生・如何にして汗を止めるか~
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今日は、「如何にして夏場の汗を止めるか」、というお話をしたいと思います。
この話、ひいては「夏場に体調を崩さないための養生」に繋がります。
ちょっとした工夫が大切、というお話です。
暑くなり始めた今だからこそ、ぜひ頭の片隅にでも入れておいてください。
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私がまだ20代のころ、
ある鍼灸師の先生からお聞きした話です。
日本と中国とが戦争をしていた頃、
酷暑の中、日本兵と中国兵とが闘争を繰り返していた時の話です。
日本兵は、熱中症で倒れる人が多かった。
バッタバッタと倒れていく。戦況が悪くなるほどの影響だったそうです。
しかし、中国兵はそれほど倒れない。
同じ酷暑という条件の中であっても、熱中症にかかる人が、だいぶ少なかったそうです。
鍼灸師の先生曰く、その理由は、中国人のある習慣にあったのではないかと。
「お茶の習慣」。これが、熱中症予防に役立っていたのではないかと、お話されていました。
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当時、中国にはお茶の習慣があったそうです。
小さな湯飲みに、あっつあつのお茶を注いで、それを飲むのです。
真夏であれば、当然、水も飲みます。
しかし、そうであっても一日に数度、必ず熱い湯を飲む習慣があったそうです。
熱によって引き立つお茶の香りを楽しむという習慣ですが、
その結果、胃腸を壊すことが少なくなるのだそうです。
胃腸が壊れないということは、それだけちゃんと食事から栄養を取れるようになる、ということ。
つまり、食欲を失っていくような夏バテを起こしにくくなるということです。
そして、この習慣、
単に、お腹が冷えないようにする、というだけではないそうです。
夏バテ予防というだけではない。それだけに止まらない効用がある、と先生はおっしゃられていました。
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飲んだ水分は、大きく2つの経路で体外へと排出されていきます。
一つが汗。そして、もう一つがお小水(尿)です。
この二つ、その目的が全く違います。
汗の目的は「体温調節」です。一方、尿の目的は、身体にとっていらないものを出すという「解毒」を目的にしています。
汗の目的は体温調節ですから、体にとって良いものも悪いものも外に出します。
だから、汗をかきすぎると身体は消耗します。しかし、尿はいくら出ても身体を消耗させることはありません。
尿の目的は解毒です。糖尿病や尿崩症などの特殊な状態でない限りは、あくまで悪いものを出すだけで、体にとって良いものは出しません。
つまり、夏場に身体を消耗させないようにするためのコツは、
「飲んだ水を、如何にお小水へと導くか」なのです。
暑い時期は体温を下げるために、どうしても飲んだ水が汗へと向かいやすくなります。
そういう時だからこそ、お小水をちゃんと出すための工夫が大切です。
お小水がちゃんと出るということは、汗をかき過ぎる状況、つまり身体が継続して消耗してしまう状況にストップをかけることが出来るからです。
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では、どのようにしてお小水を導くのか。
結論から言うと、「飲む水の温度」が重要です。
飲み水が、熱いか、冷たいかの違い。
それによって、排泄される経路が変わってくるのです。
尿は、血液が腎臓に流れ込むことで作られます。
つまり尿が作られるためには、腎臓にしっかりと血液が流れていかなければなりません。
そのため、内臓の血流が悪いと、尿が作られにくくなります。
したがって、内臓の血流を良い状態に維持しておくことが大切になってくるのです。
内臓の血流を維持するための最大の組織は「消化管」です。
胃腸を主とした巨大な筋肉組織が、エンジンとなって内臓の血行を維持しているためです。
つまり、腎血流も胃腸の血流状態に大きく左右されています。
もし胃腸が冷やされ、その血流が悪くなれば、同時に腎臓への血流も悪くなり、お小水が出にくくなってしまうのです。
つまり「冷たい水」を飲み過ぎると、
胃腸が冷やされた結果、内臓の血流が悪くなってお小水が出にくくなります。
そうして汗の方向へと向かっていく。
冷たい水は、それが常になればなるほど、止まらない汗を誘発してしまうのです。
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どうしても冷たい水を飲みたくなる夏だからこそ、
汗を止め、尿を導き、体力を温存させるための配慮が必要です。
そのためには、定期的に熱い湯を飲むこと。
冷えた胃腸を温めて、内臓の血流を維持するが大切になってきます。
夏こそ、冷たい水を控えようとすることが重要です。
クーラーのかかった部屋やお店で、冷たい水やジュースを飲んではいないでしょうか。
なにも炎天下の中や、暑い部屋でお湯を飲めとは言いません。
ただし、涼しい部屋では冷水を控える。代わりに、熱い湯を一杯だけ飲む。
冷風で体を冷ましつつも、内臓は冷やさないための工夫。
体の芯が温まると、不思議と汗が引いてくるものです。
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冷水は汗を呼び、熱水は尿を呼ぶ。
涼しい部屋でも汗が止まないという方は、一度試してみてはいかがでしょうか。
発汗は人体最大の冷却装置です。止まらない汗は、どんどん内臓を冷やしていきます。
だからこそ、夏に内臓を冷やさないための工夫を。
酷暑を迎える前に、是非知っておいていただきたい養生です。
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■病名別解説:「多汗症」