◇養生の実際・夏バテ対策編2
~なぜ夏にバテるのか?胃腸の温存と水分摂取~
<目次>
・どうして夏にバテるのか?
・充分な水分補給で逆に壊れる胃腸
どうして夏にバテるのか?
そもそも「夏バテ」って何で起こるのでしょうか?
夏に体力を失い、体がバテてだるくなり、
満足にご飯が食べられなくなるのは何故でしょうか?
結論から申し上げると、
「夏バテ」は体が疲れる前に、ある臓器が疲労することで発生します。
それ何となくわかるよ、という方も多いのではないでしょうか。
そうです。「夏バテ」は「胃腸の疲労」によって起こります。
・
夏バテが起こった時、それを最も迅速に回復させる方法は「点滴」です。
血管内に直接水分と栄養とを入れ込む。
一時的ではありますが、どうしようもない脱力感はこれで回復します。
逆に言えば、血液中の水分や栄養が失われている状態が「夏バテ」ということです。
夏に汗をかいたり、暑い中体を使ったりする。
それによって血液中の栄養が失われて、栄養不足の状態に陥る現象が「夏バテ」の本態だということです。
では、血液中の栄養は日々どうやって補給されているのでしょうか?
食事です。
食べた物が「血」になる、ということに尽きるのです。
つまり食べたものを消化吸収する力こそが、
夏バテを予防するための本質的な力になるのです。
したがって、もともと胃腸の弱い方は夏バテが起こりやすくなりますし、
反対にたとえ胃腸の強い方であっても、食事の不摂生を続ければ夏バテを起こします。
自分の胃腸を如何に疲労させないようにするか、
それこそが夏バテ予防の最重要ポイントになります。
・
胃腸を疲労させないようにする。
胃腸が極端に疲れる状態にならなければ、猛暑であっても慢性疲労は起こりません。
少なくとも一時的な疲労で済むはずです。
食事から栄養を補給して、自力で回復へと向かうことが可能です。
つまり夏バテの養生は、すべて「如何に胃腸を疲労させないか」ということに帰結します。
ここからはその具体的な養生を説明していきましょう。
皆さんが陥りやすいものから、順に挙げていきます。
充分な水分補給で逆に壊れる胃腸
水分補給をしっかりと行いましょうというスローガン。
夏になると必ず聞きますよね。これ、間違いではありませんが、危険をはらんでいます。
水分は胃腸の消化吸収機能によって体に入っていきます。
したがって、胃腸機能が充実しているという前提がないと、入っていかないし、体を巡ってくれません。
もし胃腸の弱い方が水を沢山飲むとどうなるのか。
まず胃に水が溜まって滞ります。
胃という袋に重たい水を入れ込んでいるような状態です。
そうなると胃が非常に疲れやすくなります。
食欲がどんどんなくなっていくのです。
そして水を吸収することが出来なくなります。
ただ胃腸に滞留するだけになり、胃もたれや下痢を起こします。
すなわち夏場に先ず気を付けて頂きたい養生は、
〇水分の過剰摂取は控える
ということです。
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水は、ちびちび飲んでください。
ガブガブ飲んではダメです。必ず少しずつ飲むようにしてください。
口が渇いたと思った時はすでにかなり水分が失われている、
なんてことが言われていますが、だとしても、ちびちび飲んでください。
水分(果物やジュース・ビールなど)ばっかり取り、お腹いっぱいになって食事を取らない。
夏場に起こりやすいこの状況こそ、夏バテを誘発させます。
タンパク質や炭水化物を中心にちゃんと食べること。
特にたんぱく質が重要です(過剰な脂質は胃に負担をかけます)。
水分でお腹いっぱいにすることはダメです。
いくら水分摂取が重要だといっても、絶対に避けてください。
・
人間には元来、
水分をどの程度取り入れるかを把握するためのセンサーがあります。
「ノドのかわき」です。
ノドがかわくというセンサーを信用して水を飲んでください。
汗をかいた後に飲みたくなる水の量と、
ずっと話し続けた後に口を潤したくなる水の量とは異なります。
人間には適量を欲するという優秀なセンサーがすでに備わっています。
そのセンサーに見合った量を飲むように心がけてください。
そのセンサーを無視し、ある程度意識的に水を飲むべき時も確かにあります。
炎天下の中で作業をするような、明らかにこれから大量の汗をかきますよという状況の前。
またご高齢の方など、ノドのかわきというセンサーがそもそも弱くなっている方。
そのような場合には、意識的に水を飲むことが必要です。
しかしクーラーの効いた室内で氷水をガブガブ飲む、というのは明らかに間違いです。
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水の豊富な国・日本。
水に囲まれ、水の中で生きる我々だからこそ、
水との上手な付き合い方を模索するべきです。
水をたくさん飲んだ方が良いと聞いた、
だから毎日たくさん水を飲むようにしている。
そうやって体を水浸しにして体調を壊してしまう患者さまの、何と多いことか。
そう思うのは私だけではないはず。
患者さまの病と向き合う先生方ならば、みなさんそう感じられているはずです。
水を飲むことがダメなのではなく、
あくまで個人個人に合った水の飲み方を考えるべきなのです。
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◇養生の実際・夏バテ対策編1 ~はじめに~
◇養生の実際・夏バテ対策編3 ~夏バテは胃腸に始まり胃腸に帰結する~
◇養生の実際・夏バテ対策編4 ~寝ることの意味・睡眠と夏バテ~