憧れ

2020年06月20日

漢方坂本コラム

ちょっと思い出話。

漢方薬の勉強がただただ面白くて、

端から本を読み漁っていた時代。

多分25、6歳の頃だと思うのですが、

本を読むたびに漢方家ってかっこいいなーーっと憧れのようなものを日々感じていました。

その頃の私はまだ患者さまをみてはいなくて、

ただ本の中にある世界に憧れていた。

昭和時代には漢方界のスターが沢山いて、

そういう人たちが残した本から、様々な衝撃を受けては逐一感動していました。

例えば山本巌(やまもといわお)先生の著書『東医雑録』にあるこの言葉、

「カゼは初発(はじめ)に一服で治せ」には心底シビれた。

漢方の基本中の基本である風邪治療、

名医となれば、初めに一発。・・・なんてかっこいいんだと、強い感銘を受けました。

この言葉はけっこう有名で、

当時お会いする先生方も、「漢方家たるものカゼは一服で治せなきゃだめだよ」と公言されていました。

それこそが漢方家としての常識。

私の漢方家のイメージは、こうやって憧れと伴に形作られていったのです。

しかし、一人だけ、

違うことを静かに語られる先生がいらっしゃいました。

「カゼは一服で治せって、あれ、あるでしょう。

あれはね、臨床家の言葉じゃあない。

一服で治すのが臨床家じゃなくて、何服で治すかを見極められるのが臨床家なんだよ」と。

脳天に衝撃を受けたのを、今でも覚えています。

私の漢方家のイメージは、憧れと伴に形作られました。

何度も何度も塗り替えられる憧れ。

そうやって色濃くなったからこそ、まっすぐに漢方の道を進むことが出来ました。

何服で治せるのかを見極めることこそが臨床家。

師匠に言われたこの言葉は、今思い起こせば当時の私を一変させた大切な名言です。

そしてその先、何度も何度も憧れを抱くことになります。

その一つ一つが重なっていく。そうやって、今の私に繋がっています。

 

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