春に起こりやすい症状と自律神経

2022年03月12日

漢方坂本コラム

日中の日差しがとても暖かくなってきました。

春ですね。

車に乗っていると、暑いくらいです。

かといって、夜間や朝方はまだ肌寒い。

コートでも羽織りたい気分ですが、それで日中歩くと暑くてしょうがありません。

なんやかんやで温度調節が難しい季節になってきました。

そしてこういう時期ほど、春特有の体調不良が徐々に顔を出してきます。

日中と夜間朝方の気温差。それがもたらす体への負担。

春の体調不良は、この寒暖差がポイントになります。

明らかに何らかの症状が出てくるという方だけでなく、

最近なんだか調子悪いな、という程度の方もいます。

どちらにしてもこの時期特に出てきやすい症状を、

いくつかピックアップしてみたいと思います。

 

1.春のイライラ・情緒の乱れ

 

例えば女性に多いのが、最近イライラする、という症状。

イライラのほかにも、急に悲しくなったり、やる気がわかなくなったりします。

症状というほど重いものではないかも知れませんが、月経前でもないのに気持ちが乱れ、情緒が不安定になることが、この時期になると良く起こります。

もちろん平素から月経前にイライラが起こりやすいという方であれば、より一層強めに起こったりします。

この時期の情緒の乱れの原因は、寒暖差に伴う自律神経の不安定さです。

寒い時と、暑い時とで、人はそれぞれで体の血流状態を変えています。

自律神経がそれを調節しています。それが春の時期、急激に変化させなければならないため、自律神経の調節がおいつかなくなるのです。

常に全力でばたばたと切り返さなければいけない状況。そうなると、体はずっと機敏な自律神経活動を求められます。

そうやって自律神経が休めない状況が続くことで、心身ともに興奮へと向かい、情緒の乱れが起きやすくなってきます。

 

2.春の胃腸障害・胃腸の冷え

 

このような春特有の自律神経の乱れは、情緒の乱れを起こすだけではありません。

胃腸の調子も崩しやすくなります。

例えば便秘がちになったり、便がすっきり出なくなったり、逆に腹痛を起こして下痢してしまうとか、胃の張りや胃痛、吐き気を起こしやすくなったりします。

これらもその程度はさまざまです。激しく起こってしまう方もいれば、症状というほど強いものではない方もいます。

ちょっと最近、胃腸の具合が悪いなという程度から、過敏性腸症候群のように急激な腹痛や下痢・便秘などの便通異常が起こりやすくなります。

食事も不摂生していないのに乱れることがあります。その理由は春だからです。そういう方が実際に多くなってきます。

また、徐々に暖かくなる春だからこそ、逆に胃腸が冷えやすくなります。

暖かくなるのに何故?と思われるかもしれませんが、実際にそういうことは当たり前に起こることなのです。

一日中寒い時期であれば、体はその寒さから防御を図ります。

血流をぎゅっと閉じ込めて、体幹部を冷やさないよう、自然と防御反応を起こしています。

しかし日中急激に暖かくなると、この反応が解除されます。

そのまま温かい気候が続けば問題ないのですが、春は日中暖かくても夜間や朝方、また急激に冷えてきます。

すると、体幹部に冷えを被ります。防御反応が解除されたまま、外気が急速に冷え込むからです。

胃痛・吐き気・腹痛・下痢・腹のはり・便秘。これらの消化器症状が出てきてしう方が非常に多くなります。

外気というものは強力で、いくら部屋にいても人体に影響を及ぼします。

そのため夜間にたとえ厚着をしていたとしても、もともと冷えやすい方であれば、消化管を冷やすきっかけを作ってしまうのです。

 

3.春のだるさ・倦怠感

 

これが最も多いかもしれません。春になると「体がだるくなる」という方がかなりいらっしゃいます。

フワーっと力が抜けるようにだるくなる。体から力が抜けやすく、朝の寝起きが辛くなったり、立ちくらみを起こしやすくなったりします。

もともと疲労感を持たれてる方は注意が必要です。また起立性調節障害で治療中の方も、この時期になると調子を崩される方が多くなります。

特に急激に暖かくなる日に、この傾向が強くなりやすいものです。

やはり自律神経の乱れによって起こる症状です。今まで寒さに対して血流を促そうと頑張っていた働きが、急激に解除されることで血流が停滞してしまうことで起こります。

イメージとしては、寒い部屋から急激に暖かい部屋にいきなり入れられるようなものです。だるさと同時に、顔がほてったり、めまいがしてみたり、さらに動悸や耳鳴り、不眠やソワソワ感が生じることも良くあることです。

特にここ最近、このようなだるさをともなう自律神経の乱れを起こす方が多くなってきました。

日中の気温が16度から20度と、急激に高くなってきています。この急激な気温上昇を考えれば、症状が起きるのは当然と言えば当然のことです。

毎年言っている気がするのですが、例年に比べて季節の移り変わりが極端になってきている気がします。

暖かくなる季節。本来は気持ちが晴れやかになり、心地よさを感じる季節です。

あと少しで桜も咲きます。厳しい冬が空けて、やっと迎える春。そういう時期だからこそ、体調を調えて心から健やかに過ごしたいものです。

心身に乱れがあっても、まずは自律神経が乱れやすい時期だということを是非認識しておいてください。

毎年この時期になると、同じようなコラムを上げているのですが、

春時期に起こる自律神経の乱れと、そこにどう対応していけば良いのかを、

下記により詳しく解説しております。こちらも合わせておご覧ください。



→春になぜ自律神経が乱れるのか
◇養生の実際・春 〜なぜ春に体調を崩すのか・自律神経の乱れと発現しやすい症状〜

→春の自律神経失調とその養生
春の厳しさ・春の訪れと自律神経

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※コラムの内容は著者の経験や多くの先生方から知り得た知識を基にしております。医学として高いエビデンスが保証されているわけではございませんので、あくまで一つの見解としてお役立てください。また当店は漢方相談を専門とした薬局であり、病院・診療所とは異なりますことを補足させていただきます。