曇天の癘気(れいき)

2020年12月26日

漢方坂本コラム

何かが飛んでいます。

何かは分からない。けれども絶対に何か飛んでいます。

アレルギー性鼻炎。

鼻水とくしゃみを頻発し、鼻がつまったり目が痒くなってまぶたを腫らしているいる方が、

ここ数日、なぜか多くなっています。

鼻炎は花粉や黄砂などの外的要因によって起こるだけではなく、

急激な寒暖差によっても起こります。これを「血管運動性鼻炎」といいます。

しかし、ちょっと違う。何となく違います。そういう鼻炎の起こり方ではない気がします。

毎年、冬の寒暖差で鼻炎を起こしている方々には特に反応がありません。

むしろ、春に花粉症を起こしている方々に発症している。

ここ近年、花粉症は春や秋だけのものではなくなってきましたが、

まさか今?という感じです。北西から吹き付ける雪雲に何か混ざっているのかも知れません。

漢方治療を行っている中で良く感じることなのですが、

各患者さまに、突然同じような症状が発生してくることがあります。

それは時に頭痛であったり目眩(めまい)であったり、下痢であったり鼻炎であったりする。

同時多発的に同じ症状が頻発してくることがあるのです。

「天候」。

東洋医学の思想は、人間と天候との関係の中で培われてきたという背景があります。

この事実は、おそらく人と病と健康とをつなぐ本質的な着想。

なぜならば臨床を行っていると、実際にそうとしか考えられない現象に直面することが多いからです。

「体内に何が起こっているのか」ということを突き詰める方向へと向かう西洋医学。

しかし「人が外界に生かされ、地球の活動に左右される」という視点から人を理解しようとしたのが東洋医学です。

どちらが良い・悪いかではなく。

生きた人間の体内を知るすべが無かった時代の医学では、どうしてもそう着想するしかなかったとも言えます。

しかし、捨てておけない着想だと思う。捨てておくのはもったいないと思います。

今後、人がどのように生かされているのかということを、

より科学的に、より広い視野を以て、解明されてくる時代が来ても良いのではないか。

焦点(ピント)をあえて、ぼかして観る。

曇天に想う年末。本日最終日です。



■病名別解説:アレルギー性鼻炎・血管運動性鼻炎

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