急激に夏の気配を見せ始めた5月後半。
明らかに季節がガラッと変わりました。
雨が降って大気が湿気を帯び、晴れれば急に蒸し暑くなる。
すでに夏の気配。去年はもう少し、夏が遅かった気がします。
先日、梅雨に起こりやすい体調不良として、
胃腸の乱れと、疲労倦怠感とを解説いたしました。
しかし湿気と暑さが起こす体調不良はそれだけではなく、
他にも注意するべき病がいくつかあります。
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〇皮膚病の悪化
まずは皮膚病。
湿気の季節、皮膚の病はとても悪化しやすくなります。
皮膚と湿気とには深いつながりがあって、
湿度が高いと、それだけで皮膚の病は治りにくくなるのです。
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皮膚は常にその状態が「湿度」に左右されています。
自然発汗。皮膚から蒸発する汗の量が、外気の湿度によって大きく変化するためです。
湿度が低く、外気が乾燥していれば、発汗はスムーズに進みます。自然発汗もしやすくなります。
一方、湿度が高いと発汗量が減ります。皮膚表面に出られない水が溜まり、皮膚の血液循環が悪くなります。
皮膚病を改善していく場合、皮膚の血流は治るための土台のようなものです。
湿気は皮膚の血流を停滞させることで、その土台をガタガタにしてしまう可能性があります。
血流が悪ければ患部に滲出液が溜まります。
また血流が悪ければ皮膚の再生も滞ってしまいます。
漢方ではこのような湿気による皮膚病を「湿毒」と呼んでいます。
「湿毒」の特徴は「治りにくさ」。こびりついていつまでも続いてしまうような、そうゆうしつこい皮膚炎を起こしてしまうのです。
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悪化しやすい皮膚病としては、
ニキビや皮膚膿瘍など、化膿を起こす皮膚炎。
また痒みを伴って水泡を発生させる汗疱や、アトピー性皮膚炎・蕁麻疹・ジュクジュクとした滲出液を伴う各種湿疹などがあげられます。
すでに何人かの患者さまからお問い合わせがきていて、
今年は特にその傾向が強い、という印象です。
東洋医学においては、やや特殊な治し方が求めらえる皮膚炎に属しています。
大雑把に言うと「燥湿」と呼ばれる手法によって解除を試みます。
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〇浮腫みの悪化
梅雨時から浮腫みだすという方が、かなりいらっしゃいます。
顔や手や足が腫れて、重い。時にパンと張って痛みを伴うという方もいらっしゃいます。
目に見えて腫れるというだけでなく、浮腫みは様々な症状を併発させます。
例えば足が攣れやすくなったり、
階段や坂道、ちょっと早歩きをしただけで息が上がる、
また頭が痛くなったり、動悸がしたり、体がだるくなったり、腹が張って大便が出にくくなったりと、
全身に不調をきたすことがあります。
さらにこれらは、夏になるにつれて悪化してくるものです。
だから今時期からの対応が必要なのですが、
ただこの浮腫み、養生だけではなかなか改善できません。
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「中暑」や「中暍」といって、漢方では夏に起こる病を昔から取り上げてきました。
その治療方法も多岐にわたります。
清暑益気湯や生脈散など、有名な処方が多く用意されています。
しかし、夏場に起こる浮腫みについては、これらの方剤では対応することができません。
浮腫み治療によく使われる当帰芍薬散や苓桂朮甘湯・沢瀉湯なんかも、夏場の浮腫みにはあまり効果がありません。
やはり、夏場特有の浮腫み治療を行う必要があります。
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実は江戸時代にしばしば行われていた治療方法に、大変有意義なものがあります。
私の父がよく行っていたものなのですが、今のところ、この手法が最も適切だと思います。
そして注意深く見ていると、夏場に体調を崩しやすいという方の多くが、この時期から浮腫みを発生させているのです。
夏に体調を崩しやすい方の一つの特徴といっても良いと思います。
単なる浮腫みと放っておいてはいけない、早めの対応が求められる症状だと感じています。
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