梅雨が始まる 2

2021年05月26日

漢方坂本コラム

急激に夏の気配を見せ始めた5月後半。

明らかに季節がガラッと変わりました。

雨が降って大気が湿気を帯び、晴れれば急に蒸し暑くなる。

すでに夏の気配。去年はもう少し、夏が遅かった気がします。

先日、梅雨に起こりやすい体調不良として、

胃腸の乱れと、疲労倦怠感とを解説いたしました。

しかし湿気と暑さが起こす体調不良はそれだけではなく、

他にも注意するべき病がいくつかあります。

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〇皮膚病の悪化

まずは皮膚病。

湿気の季節、皮膚の病はとても悪化しやすくなります。

皮膚と湿気とには深いつながりがあって、

湿度が高いと、それだけで皮膚の病は治りにくくなるのです。

皮膚は常にその状態が「湿度」に左右されています。

自然発汗。皮膚から蒸発する汗の量が、外気の湿度によって大きく変化するためです。

湿度が低く、外気が乾燥していれば、発汗はスムーズに進みます。自然発汗もしやすくなります。

一方、湿度が高いと発汗量が減ります。皮膚表面に出られない水が溜まり、皮膚の血液循環が悪くなります。

皮膚病を改善していく場合、皮膚の血流は治るための土台のようなものです。

湿気は皮膚の血流を停滞させることで、その土台をガタガタにしてしまう可能性があります。

血流が悪ければ患部に滲出液が溜まります。

また血流が悪ければ皮膚の再生も滞ってしまいます。

漢方ではこのような湿気による皮膚病を湿毒しつどくと呼んでいます。

「湿毒」の特徴は「治りにくさ」。こびりついていつまでも続いてしまうような、そうゆうしつこい皮膚炎を起こしてしまうのです。

悪化しやすい皮膚病としては、

ニキビ皮膚膿瘍など、化膿を起こす皮膚炎

また痒みを伴って水泡を発生させる汗疱かんぽうや、アトピー性皮膚炎蕁麻疹ジュクジュクとした滲出液を伴う各種湿疹などがあげられます。

すでに何人かの患者さまからお問い合わせがきていて、

今年は特にその傾向が強い、という印象です。

東洋医学においては、やや特殊な治し方が求めらえる皮膚炎に属しています。

大雑把に言うと「燥湿そうしつ」と呼ばれる手法によって解除を試みます。

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浮腫むくみの悪化

梅雨時から浮腫みだすという方が、かなりいらっしゃいます。

顔や手や足が腫れて、重い。時にパンと張って痛みを伴うという方もいらっしゃいます。

目に見えて腫れるというだけでなく、浮腫みは様々な症状を併発させます。

例えば足がれやすくなったり

階段や坂道、ちょっと早歩きをしただけで息が上がる

また頭が痛くなったり動悸がしたり体がだるくなったり腹が張って大便が出にくくなったりと、

全身に不調をきたすことがあります。

さらにこれらは、夏になるにつれて悪化してくるものです。

だから今時期からの対応が必要なのですが、

ただこの浮腫み、養生だけではなかなか改善できません。

中暑ちゅうしょ中暍ちゅうえつといって、漢方では夏に起こる病を昔から取り上げてきました。

その治療方法も多岐にわたります。

清暑益気湯せいしょえっきとう生脈散しょうみゃくさんなど、有名な処方が多く用意されています。

しかし、夏場に起こる浮腫みについては、これらの方剤では対応することができません。

浮腫み治療によく使われる当帰芍薬散とうきしゃくやくさん苓桂朮甘湯りょうけいじゅつかんとう沢瀉湯たくしゃとうなんかも、夏場の浮腫みにはあまり効果がありません。

やはり、夏場特有の浮腫み治療を行う必要があります

実は江戸時代にしばしば行われていた治療方法に、大変有意義なものがあります。

私の父がよく行っていたものなのですが、今のところ、この手法が最も適切だと思います。

そして注意深く見ていると、夏場に体調を崩しやすいという方の多くが、この時期から浮腫みを発生させているのです。

夏に体調を崩しやすい方の一つの特徴といっても良いと思います。

単なる浮腫みと放っておいてはいけない、早めの対応が求められる症状だと感じています。



梅雨が始まる

【この記事の著者】店主:坂本壮一郎のプロフィールはこちら