朝、学校に行こうと思っても起きられない。
頭が重く、痛い。体が重く、力が入らない。
その他めまいや吐き気、立ちくらみなどの様々な症状を発生させる「起立性調節障害(きりつせいちょうせつしょうがい)」。
私の実感では、年々その患者さまの数が増えてきているように感じます。
決して治らない病ではなく、的確な治療によって改善へと導くことのできる病です。
特に漢方薬は、確かに有効です。そう、様々な所で解説されています。
ただし、私自身の経験から言うと、
このことに、ちょっと疑問が残ります。
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昔から、漢方薬は「その方の症状や体質に合わせて処方を選択する」と言われています。
でもそれは違います。
症状や体質だけで、選択するべき薬では決してないのです。
処方の選択には、かならず「治療方針」が必要です。
起立性調節障害になってしまったからには必ず原因があり、
その原因を東洋医学的に把握することから始めなければなりません。
どうして起立性調節障害が起こってしまったのか、
どのような特徴を備えた起立性調節障害が起こっているのか。
どのような背景の中で、体がどのように変化して、
その中で今現在何が起こっていて、
それを治療するためにはどういう手法を、どういう手順で行うべきなのか。
「現状への流れ」と「それを解除するための治療方針」。
体質や症状はあくまでこれらを把握するためのヒントにしか過ぎません。
そこからより深く、起立性調節障害を東洋医学的に把握する。
漢方薬とはそういう解析をもって選択されるべきものなのです。
だから、精神的ストレスが強いなら柴胡桂枝湯(さいこけいしとう)とか、
めまい・脳貧血など循環虚弱型には半夏白朮天麻湯(はんげびゃくじゅつてんまとう)とか、
そういうやり方は、あまりお勧めできません。
あえて強い言い方をすれば、稚拙といってもいい。昭和時代からやられているこのようなやり方は、そろそろ疑問視されても良いと思います。
起立性調節障害を改善するためには、体に合った漢方薬を飲めば治るという幻想をまずは捨てることが必要です。
そもそも、体にぴたっと当てはまる薬など無いのです。
もしそうなら人間の数だけ薬が必要です。
誰一人として同じ人はいないのですから。
何の方針もなく、一つの薬で病が解除できるなんてことは無いのです。
漢方薬をどう使うのか。そして、お体をどのように変化させていくのか。
そういう治療を行うべきです。
漢方薬は、あくまで道具にしか過ぎません。
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漢方薬には何が出来るのでしょうか。そして何が出来ないのでしょうか。
それを深く・広く知り得ている先生こそが、起立性調節障害を改善できるのだと思います。
私自身もまだまだ道半ば。これからも病態把握を深めて行かなければなりません。
しかし、これだけは言えます。
治療には、ごまかすことの出来ない漢方の造詣が求められるということを。
片手間では治せません。それが、起立性調節障害だと感じます。
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■病名別解説:起立性調節障害