■症例:ニキビ(尋常性ざ瘡)

2019年07月25日

漢方坂本コラム

これさえ無くなれば。

日常的に、頻繁に、そう思う機会の多い病、ニキビ(尋常性ざ瘡)。

漢方で治る!という広告を沢山見る中で、実際にはどうなんだ?という視点でメスを入れてみる。

結論から言うと、ニキビ治療は難しい。私はそう思う。

比較的容易に治るニキビもある。
しかし、治療に時間のかかるニキビだって相当数ある。

したがって治ると簡単に断言できるほど、ニキビ治療はやさしくない。私の経験ではそうである。

そんな中、ニキビ撲滅を成し遂げた一人の女性をご紹介したい。
尋常性ざ瘡治療の実際として、悩める方には是非みて頂きたい症例である。

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初診時25歳。
肢体細く色の白い女性。

中学からでき始め、今でこそ落ち着いてきたが、ニキビにずっと悩まされてきたという。

現在でも赤味を帯びたニキビが、ポツポツとアゴまわり・口まわりに散在している。

色の白さが手伝ってか、確かに見た目に分かりやすいニキビであった。
さらにアゴまわには濃い紫色のつぶし痕(あと)が目立っている。

漢方治療は皮膚だけを見ては行えない。
皮膚の病であったとしても、体の状態を確認させてもらう必要がある。

際立っていたのは手足の冷えと月経痛、そして胃の弱さ。
結論としては、ニキビを治そうとする力自体が弱っていタイプである。

適応処方は明確だった。
しかし、ニキビを撲滅していくとなるとそれだけでは絶対に不十分である。

生活の質。

ニキビ治療には大原則がある。
皮膚は寝ている間しか治らない、という点と、
油ものや甘いもの、そして酒やたばこにより悪化する、という点である。

つまり、これら生活の悪化要因をどのように取り除いていけるのか。
それが的確な処方決定と同等のウェイトで、必ず大切になってくる。

彼女の場合、たまにある間食を除いて、食事は比較的気をつけている方だった。
しかし夜間に及ぶ仕事により睡眠時間が削られていたことが大問題であった。

私はこれらのことを彼女に説明した。
すると彼女は、それ以来自分にとって改善するべき生活習慣へと、踏み出してくれたのである。

一言に生活の改善とはいうが、非常に難しいことだと私は思う。
今まで患者さまを見てきて、現実的にそう感じている。

しかし彼女は、見た目の印象からは想像できない強い意志を私に見せてくれた。
これなら必ず改善できると思ったし、私は実際にそうお伝えもした。

彼女のニキビは、月経を繰り返すたびに良くなった。
同時に月経痛や月経前の気持ちの乱れ、また胃の痛みなど消えたことが、彼女の期待を高める結果にもなった。

夜間に及ぶ仕事も止め、食生活をもう一度見直し、
約半年経ったころには、ニキビがあったことさえ想像できない綺麗な肌に変わっていた。

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ニキビ治療の難しさ。

それは薬方をもってニキビが消える状況を体に作りだすこと、
そして生活の質を改めていくこと、この2点が常に問われるという所にある。

薬方の選択が正確でなければ、いくら生活を改めてもニキビは消えないし、
生活の質を改めなければ、いくら薬方が的確であってもニキビは治らない。

しかも生活の何を改善するべきかは、個々の患者さまによってまったく異なる。

食事や睡眠以外にも、当然気を付けるべきポイントがいくつかあり、
どこに重点を置くべきかが、人ぞれぞれの体質によってまったく違うのである。

つまり「自分にとって、本当に合った、生活習慣」を一緒に探していくこと、
それができれば、ゆくゆくは漢方薬を含めたあらゆる薬に頼らなくても、自分自身で皮膚状態をコントロールできるようになる。

今回、ニキビ治療と同時に自分の体質を知り、健康を取り戻した彼女は、
飲食店のオーナーになるために現在奮闘中である。

健康とは何か?それを考える機会を得た彼女が手掛けるからこそ、
私はこれからできるお店を心から楽しみにしている。



■病名別解説:「ニキビ・尋常性ざ瘡

〇その他の参考症例:参考症例

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※コラムの内容は著者の経験や多くの先生方から知り得た知識を基にしております。医学として高いエビデンスが保証されているわけではございませんので、あくまで一つの見解としてお役立てください。

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