■症例:胆石症

分かってはいるけど。

生活の見直しを迫られた時に、
患者さまが思われる正直な気持ちではないだろうか。

例えば健康と食生活。

長期的な食生活の乱れは、健康に害を及ぼす。
そうと分かってはいても、実際に気を付けることは非常に難しいものである。

ただし、この事実も知っておいて欲しいと思う。
健康になると、自然と健康な生活を求めるようになる。

大食家が過食してしまうのは、健康に非ざる状態がそうさせている。
したがって健康に近づくほどに、過食をしたいと思わなくなってくる。

今までなんで過食していたんだろうと、不思議に思うくらいに。

病とは、得てしてそういうものである。

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40代、女性。

三人のお子様を育てるお母さま。
すべて男の子である。みんな体格が良い。そしてお父様も素晴らしい体格をしていた。

食卓にならぶ料理は容易に想像できた。
育ちざかりである。朝昼夕と、さぞかし沢山のお米を炊くのだろう。

一昨年の夏、健康診断で胆石が見つかった。
沢山作る必要があるのだから、目の前にあれば、どうしても食べてしまう。

過食のせいだとは分かっていても、生活の見直しはなかなかできなかった。
そして昨年の春、いよいよ右脇腹に激痛が発生する。

胆嚢炎には至らなかったものの、かなり激しい痛みだった。
病院で胆石を溶かす薬(ウルソ)をもらい、それからは強い痛みは起きていない。

そのため手術は見合わせているが、食事を取ると胃がもたれて苦しいという。
また病院の薬を飲まないでいると、如実に胃が重くなってしまう。

際立っていたのは、疲労感だった。
さらに精神的に思い悩むと、脇腹に鈍痛を感じるという。

満身創痍。
いつ起こるかも知れない痛みの発作に、不安になりながらの生活である。

食生活の改善は必須。しかし、お気持ちは良くわかる。
ご家族のことを思えば、食事のコントロールは確かに難しいと思った。

三児の母である。家事と育児に追われる日々。
何とか食べて元気をつけたいと思うのは、母としての責任感の表れでもある。

そんな患者さまに、いきなり徹底した食事指導をするべきだろうか。

私はその前にやることがある、と思った。
患者さまに先ず必要なのは、身体を一旦リラックスさせることである。

私は消化管の緊張を解除する薬方を出した。
体の中心をリラックスさせる。すると不思議とからだ全体へとそれが波及する。

14日後、食後の胃もたれを感じなくなったとの報告を聞く。
さらに薬を服用した後、お腹があたたまり、脇腹の慢性的な重さが和らいだという。

便通を聞くと、今までよりも出が良く、形がしっかりしてきている。
さらに、眠りが深くなり、それとともに、あまり間食をしなくなったようである。

身体の継続的な興奮状態は、異常な食欲を促すことがある。
お腹があたたまり、興奮がストンと下がる。すると自然と食欲が落ち着く、そんな現象が実際にある。

患者さまからその反応を見て取った私は、そこで初めてこう伝えた。

今なら食生活を見直せるはずですよ、と。

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それからの患者さまは、自然と腹八分目を守れるようになった。

今まで食べてもすぐ空腹になっていた自分が、不思議で仕方ないとおっしゃられていた。

4か月後、予定していたエコー検査を行うと、脇腹の胆石が見えなくなっていた。

思った以上の素早い効果は、患者さまの努力の賜物だった。




■病名別解説:「胆石症