□酒さ・赤ら顔 ~酒さ・赤ら顔治療の実際:治り方とその経緯~

2021年08月31日

漢方坂本コラム

□酒さ・赤ら顔
~酒さ・赤ら顔治療の実際:治り方とその経緯~

<目次>

■体質改善を必要とする酒さ・治療の経緯と特徴

■酒さ・赤ら顔の治り方 ~その1~

「体質治療が求められる場合で、実際に改善していく方々は、
お顔の症状より先に、その他の周辺症状から改善してくる。」

■酒さ・赤ら顔の治り方 ~その2~

「適切な養生が治療への絶対条件であり、
同時に治療のスピードを決める。」

■酒さ・赤ら顔の治り方 ~その3~

「症状の改善までには必ず波をうつ。」

■可能性を捨てない治療

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■体質改善を必要とする酒さ・治療の経緯と特徴

東洋医学的にみると「酒さ・酒さ様皮膚炎・赤ら顔」は大きく分けて2つの病態に分けることができます。

一つは、皮膚に直接アプローチすることで改善へと向かう病態。そしてもう一つは、面部の皮膚に症状を起こしにくい体質へと導いていかなければならない病態です。

前者は丘疹膿疱型酒さ(Ⅱ型)・瘤腫型酒さ(Ⅲ型)といった激しい皮膚炎を呈している状態に多く見られます。一方で、後者は紅班毛細血管拡張型酒さ(Ⅰ型)、つまり長期的に弱い炎症が継続もしくは断続的に起こり、顔の赤みやほてり、ひりひり感などがいつまでたっても治らないという病態に多く見受けられます。そして後者の方が、より体質的・本質的な治療を行うことが求められてきます。

当薬局にご相談に来られる方は、多くのケースで後者に属しています。すでに皮膚科で抗生剤などの内服薬や軟膏による治療を行うものの、完全に良くならず長期に渡って症状に苦しまれているという方たちです。

そしてよくよく伺うと、やはり皮膚そのものの問題というよりは、体の中に問題が見受けられます。そのためいつまでも顔の症状が治りきらない、治そうとする状態が体に備わっていないという方が多いのです。

そして基本的には、皮膚そのものにアプローチできる前者の治療の方が早く治せる傾向にあります。逆に体の中から治さなけばならない方では、それに比べて時間がかかるという傾向があります

体の中から治す場合、どうしても体内から働きかける薬を使わざるを得ません。したがって体の表面、特に顔に起こる症状に対しては、影響を与えるまでにどうしても時間がかかってきます。

このケースでは、数か月以内に完全に回復するという方は比較的まれです。早期にみるみると改善していく方も確かにいらっしゃいますが、基本的には漢方薬を服用しないでも大丈夫という状態になるまでには、多くの方が半年から一年、年単位といった治療が必要になるというのが正直なところです。

このように効果の表れにくい治療をずっと続けるということは、とても辛いものです。

体の中から治しているとは分かってはいても、皮膚症状はどうしても気になります。日常的に顔に起こるとなれば猶更のことです。特に治療の始めにおいては非常に苦しい思いをされるとおもいます。期待を込めて行っていただく治療であればあるほど、飲み始めたのに昨日も赤い、今日もまた赤いと、日々落胆し身につまされる思いを多くの方がされるはずです。

そこで今回は、体質から改善しなければならない「酒さ・赤ら顔治療」において、実際にどのような経過を経て患者さまたちが改善していっているのか、その経緯と特徴とをご紹介していきたいと思います。

早く治したいと思う症状であればあるほど、如何に安心して治療を続けていただけるかが改善への決め手になります。実際に改善へと向かわれる方々は、その不安と戦いながら治療を続けられた方たちです。だからこそ、このコラムを通してその不安を少しでも解消していただければ幸いです。

■酒さ・赤ら顔の治り方 ~その1~

「体質治療が求められる場合で、実際に改善していく方々は、
お顔の症状より先に、その他の周辺症状から改善してくる。」

まず、体質治療が求めらえるケースにおいて実際に改善していく方々には、服用して数週間から数ヶ月の間に必ず起こってくる変化があります。

お顔の症状より先に、その他の周辺症状から改善してくるという傾向です。

あらゆる皮膚治療を行っても治らなかったという場合、「酒さ・顔のほてり」を改善していくためにはより本質的に体の中から治さなければなりません。すなわち、皮膚そのものにではなく、顔に炎症や火照りが生じにくい状態へとからだ全体を導いていかなければ改善していきません。

そういう治療を行い、実際に完全へと向かっていく方々では、先に顔以外の症状から改善がみられます。顔の症状が変化してくる前に、体が発しているその他の症状から先に変化してくるという傾向があるのです。

例えば便通胃もたれなどの消化器症状が先に改善してきます。また月経前のイライラや落ち込みなどの月経前症状も緩和してくることが多いものです。さらに寝つきの悪さ眠りの浅さ疲労感動悸など、全身から発せられる顔以外の症状からまず変化してきます。

そして、そういう変化を導き出せる処方を長く続けていると、顔の赤さやほてりやボツボツ感やチクチク感などが、徐々に・ゆっくりと、改善へと向かっていきます。体の中から安定させるという治療では、ほとんどの場合でこのような経過を取るのです。

そもそも体の中から治さなければいけない酒さ・ほてりというものは、顔の症状と、体の不調とが、関連し繋がっているという想定の中で進んでいきます。そのため皮膚症状を直接の目標として使うような薬はあえて使いません(使っても治りません)。体を治療する薬をもって、その関連を利用して顔の症状を安定させていくのです。

だからこそ、先に変化してくるのは体の不調からです。むしろ、それが正しい治療が行わているかどうかの見極めになります。顔以外の症状が先に変化してくることが、「酒さ・ほてり」が改善していくためには必須となるのです。そしてこれが的確に行われると、どこにいっても治らなかったという「酒さ・ほてり」であっても、改善してくることが確かにあります。

原因となっている体の不調を直さなければ、顔が治らないということです。おおもとから治すという治療の特性上、その他の症状から改善していくのが当然であり、かつそれが正しく効果を発揮してくるという証拠になるということです。

逆に言えば、顔以外の不調が治っていかなければ、顔の症状も取れないということです。そのため最初、飲み始めの段階であれば、顔よりも先に、体の方に改善の兆しが表れていないかを確認しなければなりません。

そしてもし、顔以外の症状に変化が表れてこないのであれば、その時は顔の症状を改善するためにも、他の薬への変更を考慮する必要があります。

■酒さ・赤ら顔の治り方 ~その2~

「適切な養生が治療への絶対条件であり、同時に治療のスピードを決める。」

体質から治療しなければならない「酒さ・顔のほてり」においては、改善までにいくつかの条件があります。

病態を正しく把握できているというのが一つ。そして、治療の意図が正しく反映された処方を選択できているというのが二つめです。

そしてこれらと同様に、時としてこれ以上に大切なことは、正しく養生が行われているかどうかです。改善のためには必ず養生が必要になってきます。そのため治る過程において、養生を守っていただけているかどうかを必ず確認させていただく必要があります。

そしてその内容は人によって異なります。運動、睡眠、食事、時に適切なダイエットが必要になる方もいます。また食事はほとんどの方で見直す必要があります。食べ方はもちろんのこと、酒さを悪化させる食事の内容も厳しく見直さなければなりません。また昼夜逆転など、睡眠の不摂生も必ず症状を悪化させます。典型的な例として、これらは確実に見直さなければいけない生活習慣です。

実は、薬を使わず、これらを改善するだけで治っていく方もいます。それはそれで最も良い治療方法だと言えます。運動を始めて食事を見直し、筋肉をつけてダイエットに成功したら、それだけで顔の赤みやほてりが無くなったという方もたくさんいらっしゃします。

私は先代から「薬だけで治そうとおもってもそれは甘い」と教えられてきました。そして、そこには確かにと思わせる信憑性があります。養生が必須項目であるというのは、治療の現実です。絶対治すんだ、こんなことで悩んでいられないんだと意を決して取り組む方ほど、「酒さ・ほてり」は早く、そして確実に改善へと向かっていきます。

そして治療が成功へと向かう方の多くが、辛いのは最初だけだったとおっしゃられます。生活を変えることは大変なことですが、同時に変えてしまえばそれが当たり前になります。始めの壁を突破してしまえば、なんであんな生活をしていたのんだろうと、過去の自分を逆に不思議に思うくらいに感覚が変化してくるものです。

そして先で述べたように、大切なのは人によって行うべき養生が違うということです。そこを適切に見極められるかどうかというのも、治療には求められてきます。これは治療者と患者さまが両輪となって取り組んでいくべきものです。治療者が適切な養生を探し出し、患者さまが実際に取り組んで正しいかどうかを検証していく。そういう治療を行えることが改善するための条件になります。

私は養生について厳しく指導する方だと思います。改善するためには確固たる意志で取り組む養生がどうしても必要だという現実を何回も見てきたからです。そしてそれは、最終的に漢方薬をやめても再発しない状態になっていくために必要なことでもあります。いかなる薬も使わずに、養生だけでコントロールできる状態。治療にはそのような完了があって然るべきだと私は思います。

■酒さ・赤ら顔の治り方 ~その3~

「症状の改善までには必ず「波」をうつ。」

適切な病態把握と処方決定、そして養生が正しく行われているという条件が揃っていたとします。そうであれば、かなりの確率で改善していくケースが多いと思います。ただし、そうであっても治療には必ず「波」が付きまといます

しばらく続けているうちに、前よりも確実に良くなっているという時期が来たとしても、その後、あたかも症状が前に戻ってしまったかのように「酒さ・ほてり」が発生してくることが必ずあります。そういう「波」の時期が、この治療では改善までの過程の中にかならず訪れてきます。

体質改善を必要とする「酒さ・ほてり」は、身体が敏感に反応しやすい状況を緩和させる・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・という治療に属しています。温度変化や天候・季節、緊張などのストレス、寝不足や女性であれば月経や更年期などの影響を受けて、体が敏感かつ過剰に反応してしまうために顔の症状が起こります。体質改善を必要とする「酒さ・ほてり」治療においては、この敏感さを緩和させることが改善への本質といっても過言ではありません。

生じている症状を単に「取り去る」という治療ではなく、不安定さを「安定させる」という治療が必要だということです。そして「安定させる」という治療では、多くのケースで「取り去る」治療よりも時間がかかります。正常な体の状態というのは、波が無いのではなく、波が落ち着いている状態です。したがってそこを目ざす東洋医学の特性上、さまざまな外的内的刺激によってどうしても波は発生してきます。

ただし、一時悪化の波をうけたとしても、その時こそ頑張って服用を続けていれば、その後また落ち着いてくるという方がほとんどです。そして治療が順調に進んでくると、この波自体が確かに打ちにくくなってきます。完全にゼロにすることは難しいものの、それほど赤くならない、赤くなってもすぐ引く、ほてる時はあるがそこまで赤くならず気にならない、という波の打ち方になっていきます。

波を穏やかにするという治療上の特性があるからこそ、「酒さ・ほてり」治療には時間がかかるのだとも言えます。治っていく患者さまは決まって「それほど気にならなくなった」という言葉で表現されることが多いものです。

■可能性を捨てない治療

「酒さ・ほてり」が現実的に改善していく方の特徴として、先ず「顔以外の症状」から改善していく傾向があり、さらに「養生」がどうしても必要になる、さらに症状改善までには決まって「波」を打つというお話をしてきました。

これらは事実は患者さまにとって、とても辛い現実だと思います。真っ先に治したいのは顔の症状です。他の症状が先に良くなったとしても、私はそこが治したいのではない、と感じられるはずです。また自分が当たり前のように行っていた生活を変化させるというのは、容易なことではありません。さらに一時良くなってもまた症状がぶり返せば、その落胆に立ち向かう努力と忍耐とが求められます。体質改善を必要とする「酒さ・ほてり」については、多くの場合でこのような苦労が強いられてきます。

そして、そういう中でも着実に、安心感をもって、患者さまに治療を進めていただけるよう導くことこそが、治療者の腕だと思います。患者さまに投げっぱなしにならないようにする治療、それがこの病では改善への最後の条件になると感じています。

私自身には未だ至らない点が多く、この皮膚症状とそれに伴う不安と焦りとに負けさせてしまう経験を今までたくさんしてきました。ゆっくり、安心して服用していただくことができれば、そして時間さえかけることができれば治る可能性があったのにと、今まで何回自省したか分かりません。

だからこそ、今回のコラムの内容は是非知っておいていただきたいのです。時間はどうしてもかかります。しかし、その中であっても何とか改善まで持ち込める治療を、落ち着いて継続できる治る可能性を捨てない治療を行っていくためにも、このコラムを通して治療の意図と改善への道のりとを、是非イメージしておいていただきたいのです。「酒さ・ほてり」は、然るべき治療さえ行われれば、改善へと向かい得る病だからです。



■病名別解説:「酒さ・酒さ様皮膚炎・赤ら顔

〇参考コラム
□酒さ・赤ら顔 〜なぜ温度差でのぼせるのか?ほてり体質者の特徴〜
□酒さ・赤ら顔 ~ほてり体質者と気をつけるべき生活の養生~

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