漢方治療の経験談「潰瘍性大腸炎治療」を通して 2

2024年09月05日

漢方坂本コラム

当薬局にご来局される潰瘍性大腸炎の患者さまは、

すでに病院にて西洋医学的治療を行われている、もしくは行われたことのある方々です。

潰瘍性大腸炎と診断されている方であれば当然のことではあります。

そして病院にて治療するも、症状のコントロールが難しい、

効果が芳しくないとか、副作用が強くて治療を続けていけないとか、

このままでは治らないのではないかという不安の中で、漢方の門戸を叩かれます。

私自身の見解としては、まず西洋医学な検査の上で診断をちゃんと行ってもらうことが重要です。

もし病院におかかりになっていなければ、まず病院に行っていただく。例外もありますが、それが当然かつ大切なことだと思います。

そして西洋医学的治療でコントロールできるのであれば、それはそれで素晴らしいこと、漢方は必ずしも必要ではありません。

ただそうはいかない方もいらっしゃるのがこの病。

西洋医学的治療で上手くいかないという方であれば、次の手段として、漢方治療を強くお勧めすることができます。

そうなのですが、

少し残念に感じることがあります。

あくまで私の感想なのですが、

潰瘍性大腸炎を治療されている西洋医学の先生方に、漢方薬が嫌われてしまっているのではないかと感じるのです。

勘違いかもしれません。しかしもし私が逆の立場だったら、嫌いになっていても不思議ではないと思うのです。

なぜならば漢方薬は効かないし、危険だと、証明してしまうようなことがあったから。

青黛せいたい」の乱用。

そして、それによる副作用の発生です。

一時期流行った生薬、青黛。

潰瘍性大腸炎に対して効果があるという論文が出され、

多くの潰瘍性大腸炎の患者さまに使われました。

確かに効く時があり、それによって症状が寛解へと向かった方はいらっしゃると思います。

ただ一律的・無作為に使い続けた結果として、肺動脈性高血圧症という副作用を発生させてしまいました。

そのため青黛は危ない薬として認識されています。

そしてそこから派生して、漢方そのものが危ないという印象が、医療関係者の方々に広がってしまったのだと思います。

一律的な使用・乱用からの、副作用の発現。

実は歴史を見ると、漢方では今までも度々起こってきたことです。

これは漢方が悪なのではありません。

私が漢方側の人間だから、そういうわけでもありません。

あくまでその経緯と内容とを客観的に考えて、そういう結論になるのです。

漢方の薬害が起こる時、

その多くは何らかの論文発表が背景にあります。

その論文では、使い方やどのようなケースで効くのかをしっかりと検証することなく、

まるで一律的・無作為に使用して、有意に効くかのような伝え方をしてしまっています。

敢えて極端に言えば、まるで○○病であれば、これが効くというような、

特効薬のような伝え方をしてしまっているのです。

残念ながら、漢方に特効薬はありません。

どのような病であれ、個人差・状況・程度・経過などを鑑みて、

治療方法を組み立てなければ漢方は効きません。そういう特徴を持った医学です。

この過ちを繰り返しているのが漢方医学であり、

そのたびに、漢方は非科学的というレッテルと伴に、医療者の方々に毛嫌いされてきました。

私は潰瘍性大腸炎には、先の条件の中で運用するのであれば、漢方は有意義であると実感しています。

エビデンスレベルは低いものの、それを理由に排除されてしまっては勿体ない。

西洋医学的治療を補助する、もしくは次の案として用意しておく、

そういう医学として漢方は、治療の選択肢として残しておくべきだと私は思います。

しかし漢方という曖昧な医学、その伝え方を間違えてしまうと、

一つの失敗から漢方全体の有効性が問い正されます。無理もありません。漢方はそもそも曖昧で非科学的です。

ただ、漢方の全てが悪なわけではない、ということを知っていただく必要はあります。

是非是非、東洋医学会などアカデミックな活動をされている先生方に、その辺りを広めていって欲しいと願っています。

ちなみに、

潰瘍性大腸炎において、漢方では青黛が無くても治療に全く差支えはありません。

漢方で見た時、青黛の効果は清熱です。おおよそ炎症を抑える薬といっても良いでしょう。腸に起こる炎症を抑える薬として使用します。

ですが腸の炎症を抑える薬は、何も漢方でなくても良いのです。西洋医学でたくさん用意されています。

だから西洋薬でちゃんと炎症をコントロールしていく薬を飲めば良いだけです。青黛は必ずしも必要ではありません。

ただ、西洋薬による炎症止めでは、なかなか炎症がコントロールできない時があります。

そういう場合に、漢方薬によって腸の血流と大腸を含めた消化管平滑筋の活動を安定させてあげると、

今まで効かなかった西洋薬がちゃんと効くようになる、ということがあります。

さらにそのような漢方薬を長服すると、寛解へと向かうと同時に、症状の長期管理がコントロールされやすくなり、再燃しにくくなるという傾向があります。

西洋・東洋を上手に使うことの有効性、

互いのデメリットを補い、メリットを伸ばし合うような治療を行える可能性があるからこそ、

潰瘍性大腸炎治療における漢方の印象を、少しずつでも回復していけたらなぁと思っています。



■病名別解説:「潰瘍性大腸炎

【この記事の著者】店主:坂本壮一郎のプロフィールはこちら

※コラムの内容は著者の経験や多くの先生方から知り得た知識を基にしております。医学として高いエビデンスが保証されているわけではございませんので、あくまで一つの見解としてお役立てください。

※当店は漢方相談・漢方薬販売を行う薬局であり、病院・診療所ではございません。コラムにおいて「治療・漢方治療・改善」といった言葉を使用しておりますが、漢方医学を説明するための便宜上の使用であることを補足させていただきます。