慢性蕁麻疹は皮膚科ではなかなか治しにくいという話を、
皮膚科の先生からお聞きしたことがあります。
抗ヒスタミン薬など、効果的な薬が多数用意されてはいるものの、
完治となると、なかなか難しいようです。
薬を飲んでいないと、どうしても繰り返してしまう、
そう言われる患者さまから、確かに多くのお問合せを頂きます。
漢方薬にて治ることの多いこの病は、もしかしたら抗ヒスタミン薬以上に、漢方薬が第一選択的に使われても良いのではないかとさえ感じます。
漢方には蕁麻疹に対する基本処方がいくつかあります。
それだけでも良くなる場合が多いので、基本処方はとても大切だと思います。
ただし漢方の基本処方だけでは対応できないケースもあり、そこで治らなければ漢方の造詣が問われる所です。
基本から応用まで問われる病。
漢方家にとっては、腕が表れやすい病だとも言えます。
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蕁麻疹に対してしばしば用いられる処方は「消風散」です。
ちょっとした改良が必要ですが、これはこれでちゃんと効いてくれる良い薬です。
そして蕁麻疹には寒冷蕁麻疹という病もあります。
冷たい刺激によって起こるこの蕁麻疹に対しては、「麻黄附子細辛湯」などがしばしば使われ、効果を発揮します。
これらは蕁麻疹治療の基本だと思います。
消風散は石膏などの消炎剤を含んでますので、いわゆる皮膚の炎症止めとして使われます。
また麻黄附子細辛湯は逆に血流を促す薬です。そのため冷たい刺激によって起こる寒冷蕁麻疹を治す力があります。
ともに皮膚に張り出す水(膨疹)を治める薬能を持ちつつも、作用は全くの逆。
消風散は熱を冷ます一方で、麻黄附子細辛湯は冷えを温めます。
つまり、蕁麻疹と寒冷蕁麻疹とは東洋医学的にみると全くの別病態、
と、基本的には認識されています。
しかし私はそうは思っていません。
消風散や麻黄附子細辛湯で治ってしまえばそれで良いのですが、これら基本処方でも治らない場合があり、
その場合は蕁麻疹・寒冷蕁麻疹を区別する必要が無くなってきます。
むしろ別物と考えてしまうと、治療の発想が邪魔されることさえあります。
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そもそも、この病は何故起こるのでしょうか。
基本治療で治らない病では、必ずこの問いの答えが必要になります。
西洋医学的・科学的にどうかではなく、あくまで東洋医学的にどう捉えることが正しいのかを考える。
そこに対して現実的な(治療において実際に有益となる)回答を見つけないと、適応処方も、治療方針も組み立てることができません。
私の経験では、蕁麻疹と寒冷蕁麻疹とでは、この回答が重なるケースが多いのです。
程度の差こそあれ、「結局はここを治さないと蕁麻疹が起こるよね」という同一の結論にしばしば到達します。
則ち私は、時に蕁麻疹用の薬を寒冷蕁麻疹に使うことがあります。
また一般的な皮膚病治療以外の薬を、蕁麻疹に応用することもあります。
根が同じなら使えるはずなのです。そう想定して治療した時、それが実際に正しければ一見皮膚に関係ない薬であっても蕁麻疹は治ります。
やはり重要なのは、患者さまの体調をお伺いした時に、その根が何なのかを把握すること。
中医学では外湿・外寒とか、外からの刺激の種類によって処方を使い分けます。
しかしそれよりも、蕁麻疹が何故起こるのかという、その根っこの所を掴むことの方が大事です。
むしろ外刺激の種類に惑わされてしまうことで、治らない、手段が無いという状況に陥ってしまうことさえあります。
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そう考えると、ネットや本ではどうしても、蕁麻疹にはこの薬、寒冷蕁麻疹にはこの薬と説明されていますが、
それだけで治るはずがないのは当然だと思います。
どうしてもそう説明せざるを得ないので、仕方ないことではありますが。
蕁麻疹は、その他の皮膚病、例えばアトピー性皮膚炎や脂漏性湿疹・乾癬などよりも比較的治りやすい病ですので、
ネットや本だけの情報だけではなく、より一歩踏み込んだ東洋医学を是非お求めください。
東洋医学専門の医療機関であれば、そういう治療を施してくれるはずです。
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■病名別解説:「蕁麻疹・寒冷蕁麻疹」