これは漢方治療のあるあるだと思うのですが、
「起立性調節障害」という言葉を患者さまからお聞きする場合、
その言葉にはかなり広い範囲が含まれています。
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起立性調節障害というのは、そうと診断するするためにはちゃんとした試験が必要です。
例えば「新起立試験」や「ヘッドアップティルト試験」があります。基本早朝に測るこれらの検査は、前泊入院して行う必要があります。
ただこのような検査を行わなくても、症状からみておそらくそうだろうと判断することは可能です。
ですので頭痛があれば痛み止めが処方され、吐き気があれば吐き気止めを処方されるという、
対症治療で様子を見るというケースは比較的散見されます。
このような「起立性調節障害の疑い」という状態でご来局される患者さまは、当薬局でもかなりいらっしゃいます。
また「疑い」かどうかもはっきりしないという方もいます。
起立性調節障害で・・・という患者さまの言葉には、かなり広い状態が含まれていて、
突然体がだるくなった、頭痛や吐き気で学校に行けなくなった、そういうはっきりとはしなくても起立性調節障害っぽいという状態を含めて考えれば、
かなり広い視野をもって、お体の状態を把握しなければなりません。
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私の実感では、起立性調節障害という言葉だけでは、漢方治療を特定することは不可能だと感じています。
東洋医学的に、実に多くの状態が考えられます。治療にかかる時間も、人によって千差万別という印象があります。
先で述べたように「疑い」という状態が介在しているという理由だけではありません。
たとえ新起立試験によって正確に診断されていたとしても、人によって取るべき治療方針は全く異なります。
先日、16歳の高校一年生がご来局されました。
夏休み明けから吐き気や下痢が頻発し、約2ケ月ほど体調不良が続いていました。
当然朝はだるく、吐き気が強いので、学校に行くことができません。
かかりつけの小児科にかかり、起立性調節障害かもしれないと。
下痢止め、吐き気止めをしばらく服用したものの、改善せず当薬局にご来局されました。
体調不良により朝起きられない、学校に行けない。
立ちくらみもありました。確かに起立性調節障害っぽい症状です。
ただ、この患者さまのお話をよくよく聞いていると、少し違うなと。
夏バテ。
単に夏に起こった特有の体調不良が、そのまま継続してしまっている状態です。
すでに秋も深まり徐々に寒くなってきた時期、
夏バテが継続しているなんて、思いもよらなくて当然だと思います。
しかし東洋医学的にみると、お身体の状態はまさしくそれ。
夏特有の病態が、数ヵ月経ってもそのまま体に続いていたのです。
治療、一か月。
今回治癒までにかかった時間です。
この短さは、一般的な起立性調節障害治療とは明らかに異なります。
起立性調節障害という認識には、かなり広い病態が考えられると思います。
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早く治るものと、時間をかけざるを得ないもの。
起立性調節障害と認識されている方たちには、実にさまざまな治療の流れが存在します。
そして病院ではっきりしないという状態であれば、東洋医学を強くお勧めします。
漢方では起立性調節障害であろうとなかろうと、見極めさえ正しく行われれば治療の道筋を作り出すことが出来るからです。
ただやはり、当薬局におかかりになる方では時間を必要とする方が多いかも知れません。
発症してすぐのほうが、治りが早いという印象はあります。
そして成長期真っ盛りという時期では、どうしても安定するまでに時間がかかる傾向はあります。
ただスッと治る方もいらっしゃる。本当に千差万別だと思います。
さまざまな治療を行っていく中で、
どのような方だと早く、どのような方だと時間がかかるというのが少しずつ分かるようにはなってきました。
なるべく発症してすぐの方が良い。
これは、確実にそう言えると思います。
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■病名別解説「起立性調節障害」