◆漢方治療概略:「頭痛」・前編
<目次>
○日常的に起こりやすい頭痛
○疲れた時に起こる頭痛
■補中益気湯(ほちゅうえっきとう)
■十全大補湯(じゅうぜんたいほとう)
○天気・気圧に左右される頭痛
■呉茱萸湯(ごしゅゆとう)
■五苓散(ごれいさん)
■苓桂朮甘湯(りょうけいじゅつかんとう)
■半夏白朮天麻湯(はんげびゃくじゅつてんまとう)
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<まえがき>
昨今、漢方薬はとても身近な薬になりました。
多くのCMが流れていますし、ドラッグストアにはたくさんの漢方薬が販売されています。このような市販薬は簡単に手にとって選べるという意味でとても便利です。しかし「どれを試したら良いのか分からない」という声をしばしば拝聴します。
そこで、そのような方々に参考にしていただけるよう、漢方治療の概略(細部を省いたおおよそのあらまし)を解説していきたいと思います。
概略はあくまで概略。臨床では確実にその応用が求められます。ただし基本的手法でズバリと治せる方も多く、そういう意味では体調不良でお困りの方にはぜひ読んでいただきたい内容かと。
ただ「何を言っているのか良くわからないぞ」とか、「やってみたけど全然だめ」という方がいらっしゃいましたらその時はぜひ漢方専門の医療機関に足をお運びください。
この場で伝えたいことは山ほどありますが、とてもじゃないけれど伝えきれません。実際におかかりになれば基本どころではない、各先生方が提供される漢方の神髄を体感できるはずです。
「頭痛」の漢方治療概略・前編
頭痛は誰しもが日常的に起こしやすい症状です。
ありふれた症状であるため、市販の痛み止めをパッと飲んで、その場をしのいでいる方が多いと思います。
痛み止めが良く効き、かつ月に一二回程度であれば、それで良いかもしれません。
しかし、週に数度と頻度が多かったり、痛み止めが効きにくかったり、痛み止めで胃が悪くなるという場合であれば、市販の痛み止めの連用は避けたい所です。
そんな時に試してみていただきたいのが漢方薬です。
漢方には頭痛に効果の高い薬が多く用意されています。
また、頭痛を起こしにくい体質へと導く効能が期待できることも利点の一つです。
ただしその選び方となると、なかなかに難しいと思います。
頭痛に効くとされる漢方薬をいくら飲んでも、効いたためしがないというお話もしばしば伺うところです。
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そこで今回は、頭痛に効果的な漢方薬の選び方を、簡単にご説明します。
正直頭痛という症状は、人によって千差万別の治療方法があります。
その背景にある疾患や病態によっても治し方が異なるため、本来であれば一度漢方専門の医療機関に足を運ばれた方が良いでしょう。
しかし日常的に起こりやすい症状であるからこそ、より手軽に治せる頭痛というものも確かにあります。
今回は、そのような「日常的に起こりやすい頭痛に対しての治療概略」を解説していきたいと思います。
日常的に起こりやすい頭痛
まずは頭痛がどのような状況で起こるのかを考えてみてください。
多くの頭痛にはきっかけがあります。はっきりとは分からなくても、「もしかしたら」という程度で構いません。
きっかけを掴むことが、漢方を選択する上でとても大切です。
ここでは4つの状況に分けて、漢方薬の選択方法を示していきたいと思います。
1、疲れた時に起こる頭痛
2、天気・気圧に左右される頭痛
3.月経に左右される頭痛
4、緊張・興奮・高血圧に伴う頭痛
それぞれ見ていきましょう。
※月経に左右されやすい頭痛と、緊張・興奮・高血圧に伴う頭痛は後編にて解説いたします。
疲れた時に起こる頭痛
仕事や勉強など、頑張った後に頭が痛くなるというかたは沢山いらっしゃいます。
東洋医学では疲労と血行不良とはほぼイコールです。体を動かしすぎたり、考えすぎたりすると、血を消耗して血流が悪くなるために頭痛が発生すると考えられています。
比較的日常にありふれた頭痛の一つであり、良く睡眠をとれば改善することが多いものです。
しかし慢性的に疲れやすかったり、どうしても頑張らなければいけない時などは、寝ても疲れが取れず頭痛が続いてしまいます。
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そういう時はまず、疲労回復の漢方薬を上手に使っていただくことをお勧めします。
極端に疲れたという状態でなくても構いません。むしろ日常的によくある疲労感、例えば最近寝ても疲れが取れないなとか、寝不足で日中吸い込まれるように眠くなってしまうとか、そういうありふれた疲労を感じた時に即座に服用したほうが効果的です。
■補中益気湯(ほちゅうえっきとう)
■十全大補湯(じゅうぜんたいほとう)
これら2つの処方は、疲労によって起こる頭痛に使いやすい薬です。
補中益気湯は、日中に服用しておくことで眠りの質を高め、寝ている間の疲労回復を高める効能があります。
また十全大補湯にも同様の効果があり、両者ともに疲労を回復しながら頭痛を抑える効果があります。
使い分けとしては、胃腸の弱い人は補中益気湯を、胃腸にはそれほど問題がないという方は十全大補湯を選ぶと良いと思います。
特に十全大補湯は、熱いお湯に溶かして飲むことをお勧めします。体がほんわかと温まって心地よいという反応が出るならば、体にピタッと合っている可能性が高いと思います。
※参考コラム:【漢方処方解説】補中益気湯(ほちゅうえっきとう)・前編
天気・気圧に左右される頭痛
頭痛を訴える方の多くが、天候によって痛みが増悪します。
特に低気圧、雨が降る前や降っている際中、また雨が上がって気温が上昇した時に頭痛を感じる方もいます。
昨今「気象病」という名で天候に左右される体調不調がしばしば取り上げられるようになりました。
頭痛は気象病により起こる症状の最たるものです。漢方薬を上手に使用することで痛みを和らげることができます。
■呉茱萸湯(ごしゅゆとう)
頭痛治療で有名な本方は、かなり激しい頭痛であっても即効性をもって効く場合のある薬です。
頭痛とともに吐き気を伴うようであれば、試してみる価値があると思います。もし一服して効果を感じたならば、そのまま常備薬として備えておくと良いと思います。
ただし味が非常に苦く飲みにくい点と、飲むタイミングによっては効果が薄いという側面があります。
服用は基本的に頭痛が起こる前、その前兆を感じた時に、熱いお湯で溶かして服用することが大切です。
■五苓散(ごれいさん)
同様に頭痛治療で有名な処方として五苓散があります。
浮腫みやめまいなどの治療薬としても有名で、身体の水分代謝を改善する薬としてしばしば紹介されています。
五苓散が効く頭痛は「重さ」を伴うことが一般的です。
頭重感という頭が重い感覚。まるで重い帽子をかぶっているように痛むという時に効果を発揮する傾向があります。
特に一日のどこかのタイミングで、のどが渇いて水をガブガブ飲みたくなるという症状があれば一度試してみてください。
例えば二日酔いや乗り物酔いの時に良く効く薬であり、お酒飲みの方の頭痛であればかなりの頻度で効果を発揮します。
※参考コラム:【漢方処方解説】五苓散(ごれいさん)
■苓桂朮甘湯(りょうけいじゅつかんとう)
立ちくらみやめまいの治療薬として有名な本方は、時に頭痛にも効果を発揮します。
五苓散と同様に水分代謝を改善する薬ですが、五苓散が誰しもに起こり得る一時的な浮腫に効く一方で、本方はより体質的に浮腫みやすい方に適応するという印象があります。
朝や午前中はエンジンがかかりにくく、午後になるにつれて元気になり、夜は返っていつまでも寝ないでいられるという、いわゆる宵っ張りの方にその体質者が多いものです。
また色白でむくみやすく、恥ずかしいと顔を赤くしてドキドキしやすい方。そういう方が日常的に頭痛を感じるようであれば、本方を体質改善薬として飲み続けると良いでしょう。そして出来るだけ、寝不足と運動不足とを解消するようにしましょう。
※参考コラム:【漢方処方解説】苓桂朮甘湯(りょうけいじゅつかんとう)
■半夏白朮天麻湯(はんげびゃくじゅつてんまとう)
胃腸の弱い方のめまいや頭痛に効果を発揮する方剤です。
多種類の薬が少量ずつ入っている所がポイントで、胃腸の弱い方であっても負担なく飲めるように工夫されています。
ただし強い頭痛に適応するというよりも、弱く日常的にいつまでも続いている頭痛に適応する傾向があります。
めまいを治す薬でもありますが、これも同様です。メニエール病のように強いめまいではなく、どちらかというと弱く日常的かつ断続的に続くというめまいに適応します。
体力を回復するという側面もあるため、天気のみならず疲労によっても頭痛するという場合に試してみると良いでしょう。弱く、細く、食が細い方におこる弱々しい頭痛という点を目標にしてください。
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後編に続く・・・◆漢方治療概略:「頭痛」・後編
■病名別解説:「頭痛・片頭痛」