漢方初学者が読むべき本の順序、という話。
まずは「歴史」を学んだ後、「昭和の大家」の著作を読むべし。
そして次は2つの方向性があるよと。
すなわち「江戸(明治)時代に書かれたもの」と「昭和後期から平成に書かれたもの」。
どちらを先に読むべきというのではなく、両者ともに読み広がっていくというイメージ。
そしてそれぞれに読むべき意味があるので、
それを解説したいと思います。
まずは、漢方初学者がB「江戸(明治)時代に書かれたもの」を読む意味について。
結論から先に言います。
江戸時代の書物を読むと、昭和の大家の言っていることがさらに分かってくる。からです。
江戸という時代は、それまで中国医学を輸入しそれを模倣してきた医療と断絶する時代、と言っても過言ではありません。
日本人が自らの考えをもって医療を作り上げようとした時代であり、
その結果、いわゆる中医学と日本伝統医学(漢方)との差が大きく生まれることになります。
先に述べた「昭和の大家」たちは、実は非常に日本伝統医学的な立場を色濃く持っています。
(というのは、現代中医学がお隣の中国から入ってくるのは、昭和の大家が活躍していた時代より後だからです。)
したがって昭和の大家たちが書いてあることの根拠が、江戸時代の漢方家の言葉に拠っている部分が多いのです。
つまり江戸時代の漢方家たちがどのように治療を行っていたのかが分かると、
昭和時代の漢方家たちの理屈が分かりやすくなるという寸法です。
とくに触れておくべき江戸の漢方家とその著作は、
・浅田宗伯(あさだそうはく):『勿誤薬室方函口訣』
・尾台榕堂(おだいようどう):『類聚方広義』
・甲賀通元(こうがつうげん):『古今方彙』
この三人と、まずは三冊。
他にも吉益東洞(よしますとうどう)とか山田正珍(やまだせいちん)とか和田東郭(わだとうかく)とか曲直瀬道三(まなせどうざん)とか、重要人物はたくさんいるけれども、基本的に後回しです。
カナ送りしてある本が出ていて読みやすい点、江戸時代の各流派(後世方・古方・折衷)を比較的大成しているという点において、これらが良いと思います。
初学者はこれらの本を眉間にシワを寄せて読む必要はないかなと、思います。
これらの本を横に置きながら、昭和の大家の本を読み、必要な時にパラリとめくってみるということから入ってみてください。
以下は余談ですが、、
実は、この江戸時代の医家たちの本を読むべき本当の理由は別のところにあります。
今の時代にはない発想の宝庫。それが江戸時代です。
ただこの話は今は置いておきましょう。
とにかくこの時代の書籍を読むことで、昭和の大家の言葉をより深く知ることができます。
(続く・・・)
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