□頭痛・片頭痛
~漢方治療をお勧めできる頭痛患者さんの特徴~
<目次>
1.胃腸の弱い人・胃腸が疲れている人
2.自律神経の乱れが関与する人(多様な症状を伴う人)
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漢方治療をお勧めできる頭痛患者さんの特徴
ずっと悩まされ続けている頭痛・片頭痛をどうにか治したい。
そういう想いで漢方治療を選択される方はたくさんいらっしゃいます。
そして漢方薬を服用することで頭痛から解放される方が現実にいらっしゃいます。故に頭痛は当薬局でも多くのご相談が寄せられる疾患です。
片頭痛は未だ確定的な病態生理が明らかになっていません。西洋医学においてもその治療は研究段階にあります。その中で近年では予防治療としてCGRP関連抗体薬(注射製剤)が開発されました。また最近では急性期および発作抑制ともに使用可能でかつ経口投与可能なCGRP受容体拮抗薬も出てきています。
日進月歩の進化を見せる頭痛治療。これらの薬が今後、多くの頭痛患者さんを救うことを願ってやみません。そして同時に、それでも私はやはり漢方治療を捨ておくことは勿体ないと考えています。なぜならば明らかに「漢方薬で良くなりやすい」、もしくは「漢方薬を服用していないと良くなりにくい」という人たちがいらっしゃるからです。
頭痛・片頭痛の漢方治療は簡単ではありません。さまざまな疾患・症状の中でも治療に対する深い造詣が求められるという印象があります。その中で私が感じるのは、西洋医学的治療が効きにくい人にはある特徴が見受けられる、ということです。さらにそういう方では逆に、漢方治療が功を奏しやすいという特徴もあります。
今回のコラムでは、そういう患者さまの特徴を解説していきますので、ご自身と照らし合わせながらぜひ治療の参考にしていただければ幸いです。
1.胃腸の弱い人・胃腸が疲れている人
〇普段から胃もたれしやすい
〇便通が不安定になりやすい
〇少食で食べ過ぎるとすぐに胃が気持ち悪くなる
〇ストレスが胃腸にきやすい
〇日常的に寝不足があったり食べ過ぎがあり胃腸が疲れれている自覚がある
など。。。
慢性的な頭痛と共に、上記のような胃腸の不具合を自覚されている方は、西洋医学的治療が大変効きにくい印象があります。
頭痛発作予防薬を服用し続けてもなかなか治っていきません。また痛み止めが効きにくく、かつ飲むと胃が受け付けないという人もいます。
そういう方であれば、まずは漢方治療を強くお勧めできます。なぜならば頭痛改善のためには、まずは胃腸から良くしていかなければならないパターンがあるからです。
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頭痛は総じて血液循環の不具合が関与していると仮定した場合、その血液循環を底から支えているのは消化管であるという着想が東洋医学にはあります。
そもそも血液循環を安定させているのは身体のあらゆる筋肉であり、特に消化管は巨大な筋肉であるため、胃腸の弱りは全身の血流障害に波及していきます。故に胃腸という土台から回復させなければ頭痛が消失しないというパターンがあるのです。
この胃腸への配慮は基本的に西洋医学では難しいものです。この手の胃腸の弱さ、すなわち消化管平滑筋の活動の乱れは検査で感知することが難しく、かつその可能性に対しても配慮できる薬が多くはありません。
その点、漢方では消化管活動に作用する薬が多く用意されています。頭痛治療で有名な「呉茱萸湯(ごしゅゆとう)」も基本的には胃腸薬ですし、その他「五苓散(ごれいさん)」や「半夏白朮天麻湯(はんげびゃくじゅつてんまとう)」も見かたによっては吐き気や下痢を止める胃腸薬です。
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ちなみに頭痛と同時に吐き気を伴うケースが散見されますが、これはそもそも胃腸が弱く疲れている人に散見されます。
すなわち吐き気を伴う頭痛であれば、漢方治療をぜひ検討していただきたいということ。吐き気を伴うほうが、漢方としては病態を見極めやすいという印象があります。
ちなみにここで言う胃腸が弱いとは、大きく分けて二つのタイプがあります。
一つはそもそも昔から胃腸が弱いというタイプ。消化管平滑筋が薄っぺらくて食べても太ることが出来ず、少しでも食べ過ぎるとすぐに胃腸に不具合が生じるという元来の弱さを持つ人です。
もう一つはそもそも消化管平滑筋は弱くはなく、食欲も旺盛。太ることもできる。そして少々食べ過ぎて胃がもたれた程度なら次の食事も難なく食べられるため、そのうち疲労がどんどんたまって疲れてしまうというタイプ。すなわち強いからこそ食べ疲れしてしまうタイプです。
漢方治療は両者ともに強くお勧めすることができます。ただし治療期間は前者の方が長くかかりやすいという傾向があります。
2.自律神経の乱れが関与する人(多様な症状を伴う人)
人は日々さまざまな刺激を受けながら生活しています。そしてそういった刺激に対して身を守るべく、身体は血流を変化・対応させることで自身の生命活動を保っています。
この働きを行っているのが自律神経です。すなわち自律神経は血流を調節する働きを有しています。
つまり自律神経が乱れると、血流の調節が上手くいかなくなり、血液循環が乱れて頭痛を生じる原因になると考えます。そして自律神経が乱れている人の頭痛では、その他さまざまな症状が併存していることが普通です。
例えばめまいや耳鳴り、動悸や息苦しさ、咽の詰まりや肩こり、吐き気や胃もたれや下痢など、からだ全体に及んで多岐に渡る症状に悩まされていることが多いものです。さらに物事に対して神経質になり、不安感や焦り、イライラや落ち込みなどの精神症状も伴うことも良くあります。
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このような多岐に渡る症状をお持ちの方であれば、漢方治療を強くお勧めします。
理由はいくつかありますがまず第一に、自律神経の乱れを介在させている方では西洋医学的な治療が難しくなるという点にあります。
例えば多岐に渡る症状に対応しようとすると、西洋医学では頭痛には痛み止め、めまいには眩暈止め、吐き気には吐き気止め、胃もたれには胃薬と、症状それぞれに薬が必要になってしまうか、もしくは向精神薬で対応する必要があります。
その点、漢方では一つの薬でこれらの症状を包括して治療できる可能性があります。多種類薬剤の併用が問題視される昨今だからこそ、この特徴は漢方において大変有意義な利点であるといえるでしょう。
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さらに、そもそも自律神経の乱れというものは、検査により積極的にそうだと断定することが難しいため、西洋医学ではどうしても「問題なし」と認識されてしまうことが多いものです。
それでも症状があるわけですから、当然治療は必要です。結局のところ体の問題ではなくメンタルの問題として、心療内科や精神科を紹介されるというのが典型的なパターンの一つです。
心療内科にてメンタルのケアを行うことで頭痛も同時に回復するのであればそれに越したことはありません。しかし、良くならないという方も少なからずいらっしゃるというのが現実です。
漢方治療ではそういう方が日々たくさんいらっしゃいます。そして時間をかけて治療を続けることで良くなるケースが散見されることから、もし自律神経が乱れているとご本人が感じられるのであれば、なるべく早めの段階で漢方治療を検討された方が良いと感じることがままあります。
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ただし自律神経とは、本質的には体に働く神経(末梢神経)であり脳(中枢)に働く神経でありません。時に頭痛は脳の問題やうつや統合失調症といったメンタルの問題から生じることもあります。患者さまご自身でこれらの違いを判断することは不可能です。
そのため基本的には漢方治療を始める前に、専門の病院にて現在の状況を確認・判断してもらうことをお勧めします。西洋医学と東洋医学との良い所取りがしやすいというのも、頭痛治療の特徴だと感じています。
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■病名別解説:「頭痛・片頭痛」
□頭痛・片頭痛 〜なぜ低気圧で頭痛が起こるのか・天気と頭痛との関係〜
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漢方坂本/坂本壮一郎|note