〇漢方治療の実際 ~瞑眩(めんげん)と好転反応・知っておくべき体調変化について~

2026年02月04日

漢方坂本コラム

○漢方治療の実際
~瞑眩(めんげん)と好転反応・知っておくべき体調変化について~

<目次>

■不安を煽る好転反応
■好転反応にて起こりやすい症状
■好転反応の継続期間
■好転反応に対応するためのコツ

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不安を煽る好転反応

漢方治療は道のりです。

直ぐに治る病もありますが、一般的には時間をかけながら治療を行うべき病の方が圧倒的に多いものです。病の多くが一朝一夕で作られたわけではないからです。

その病にならない体の状態を目指すのであれば、やはり治療は道のりであり様々な山や谷が存在します。

そしてその道のりを歩いていくために必要なもの、それは自分のお身体と治療への理解、そして何よりも治療に安心感を持てるかどうかだと私は考えています。

症状がある以上、完全に安心しきることは難しいでしょう。しかしある程度の安心感が無ければ、道のりを歩くことは恐怖でしかありません。

そして漢方治療ではその早い段階、つまり治療を初めて間もない段階で起こり得る恐怖というものがあります。それは漢方治療特有の現象である「瞑眩(めんげん)」、俗に「好転反応」と呼ばれているものです。

瞑眩(好転反応)とは漢方薬を服用し始めた早めの段階で出現する不快な症状を指します。故にこれが出現すると大変不安な気持ちになるはずです。

漢方薬が体に合っていないのではないか、逆に治療によって悪化していくのではないか、そういう不安が急に押し寄せて治療を続けていくことが出来なくなる。

最初の一歩目でつまずいてしまうのです。ただしこの瞑眩は、単なる副作用とは異なるものです。

一時的に不快な症状が出現するものの、そのまま同じ薬を継続していけば、むしろ体調が良くなり症状が消失していきます。

だからこそ患者さまにとっては大変やっかいなのです。副作用と好転反応とは似て非なるもの。症状こそ似ているものの、真逆の経過を辿るものだからです。

瞑眩とは俗に好転反応と言われている通り、漢方薬を服用し、最初のうちに不快な症状が出たとしても、その薬で体調が好転していく反応を指しています。

つまり治療として正しい場合に出現する反応のことを指します。そしてこの反応が何故起こるのかは、科学的に解明されてはいません。

その中で副作用との違いは、そのままの治療によって改善へと向かうかどうかにあります。つまり副作用は間違えた治療である一方で、好転反応はあくまで正しい治療中に起こる一時的な不快症状、という説明が一般的になされています。

したがって副作用の場合は服用薬剤を変更する必要がありますが、瞑眩の場合はそのままの治療を継続するというのが取るべき選択肢の一つになります。

ただし好転反応であっても不快な症状であることに変わりありません。

故に私は、あくまで瞑眩・好転反応が起こらない治療を目指すべきだと考えています。

好転反応であったとしても出来れば避けるべき、ただし治療によってはどうしても避けにくい場合があることも事実です。

その場合にやっかいなのが、この好転反応によって不安になってしまうケース。その不安のために将来治っていく可能性の高い治療、つまり正しい治療を放棄してしまうケースが非常に多いのです。

故に道のりである治療において、この好転反応とは大変にやっかいな現象なのです。

将来改善へと向かう可能性のある治療を投げ出さないためにも、治療者がなるべく瞑眩が起こらない治療を心がけ、同時に患者さんも好転反応について理解しその対応を把握しておくことが大切です。

ただし好転反応と副作用、その差を見極めることはおそらく患者さんにとっては不可能に近いと思います。

そこで今回はこの瞑眩・好転反応についてあらかじめ知っておいてもらうべく、一般的に言われているものと、さらに私の経験に基づくものとの両方を記載しておきます。

ただしこのコラムの内容だけで判断することはお勧めできません。心配であれば必ず漢方薬を出してくれた医療機関に直接問い合わせること。そして、そちらの先生がおっしゃることを優先してください。

好転反応にて起こりやすい症状

まず好転反応にて起こりやすい症状をお伝えします。病によって、また出された薬によって、さまざまな症状が起こる可能性があります。

そこで頻度の高いものからまとめて記載します。安心感をもって治療できるよう、あらかじめ知っておいてください。

□疲労感・脱力感

漢方薬服用後に、その好転反応として疲労感や脱力感、眠気を感じるという現象。これは良く起こる現象です。服用して直後に感じるという人もいます。

意識を失うようなものでは決してなく、何となく体がだるいとか、力が入りにくいとか、ぼーっとして何も考えたくなくなるとか、普通に眠くなるとか。必ずではありませんが、これらの症状と同時に体がポカポカと温まる感じを受ける人もいます。ずっと気を張っていた緊張が解除され、体がやっとリラックスへと向かった時の反応として起こるという印象があります。

これらの症状があってもそれほど心配はいりません。その脱力感や眠気とともに良く寝て、養生を守りながら服用を続ければ体調がより上向きに回復することが多いものです。もし日中服用すると疲労感が強くなり困るということであれば、夕方や寝る前に服用することをお勧めします。この反応は薬がピタッと合って早期に回復できる場合に起こることが多いものです。

□胃もたれ・下痢・便秘

漢方薬はほとんどの薬が内服薬(飲み薬)です。故に必ず消化管を経て体内に入っていきます。

つまり消化管には必ず何らかの刺激が及びます。そのため副作用でも好転反応でも、胃腸症状というのは服用後に起こりやすい不快症状の最たるものです。

もし漢方薬を服用して胃もたれや胃痛・下痢や便秘などの胃腸症状を感じたら、副作用の可能性を鑑みてまずは出された先生に問い合わせることをお勧めします。

ただもし胃腸症状が出たとしても、それだけで不安になる必要はありません。好転反応の中でも胃腸症状というのは比較的起きやすい症状だからです。

つまりそのまま服用を続けることでむしろ胃腸がスッキリして全身の体調が良くなるということは、漢方治療においてしばしば見受けられる現象です。もちろん程度にもよりますが、胃が若干もたれる、胃が少し重く感じる、便が緩い、排便回数が減ったという程度の変化であればそれほど心配はいりません。

私の場合、好転反応によってもし胃もたれや胃痛が起きた場合は、まずは食後に服用してもらうよう説明しています。また下痢が起こった場合は食養生を徹底してもらい、それでも不快な下痢があるようなら服用回数を減らしてもらいます。また便秘の場合も同様に食養生を徹底してもらうと伴に、必要であれば然るべき薬を追加するなどの対応を行っています。

□皮膚症状

漢方を勉強している人であれば、瞑眩と言われて最初に思い浮かぶのは皮膚症状ではないでしょうか。

漢方薬を服用後、ニキビや湿疹・蕁麻疹などが一時的に強く出て患者さんが大変狼狽する、しかし名医はそれを瞑眩だと看破し腰を据えて服用を続けさせたところ、数日で主訴もろとも消失したなどという武勇伝は、漢方の世界では良くある話です。

確かに、服用後に一時的に起こる皮膚症状は好転反応であるケースがあります。ただこれは、個人的には好転反応であってもなるべく起こさない治療を心がけたいものです。

皮膚は他の人からでも目に見える場所であり、見た目に直接かかわるため出た時はかなり不安になると思います。

ショックを受けて当然ですので、安心感を必要とする漢方治療とは程遠いものになります。

ただ瞑眩として出やすい症状だと言うことも理解しておいてください。手の甲に少々出たなどの程度として軽いものであれば、結局改善する症状ですので不安には及びません。

場合によっては優しいかゆみ止めの軟膏などを一時的に塗ることで対応してもよいでしょう。

以上に挙げた症状以外にも、好転反応ではさまざまな症状が出る可能性があります。

ただし好転反応とはそもそも、薬が効きが良すぎた場合に起こることが多いものです。

つまり漢方薬がちゃんと体に反応しているということでもあり、調節の仕様によって回復する可能性が充分にあることを示唆している現象でもあります。

好転反応による不快症状については、薬の分量や服用方法を調節するなどの対応手段がいくらでもあります。漢方薬を服用した後に出た症状であったとしても、全ての症状を不安に思う必要はないということを知っておいてください。

好転反応の継続期間

好転反応にはさまざまな症状が出る可能性がありますが、これらの共通して言えるのは一時的なものだということ。その多くは2.3日から続いても4.5日で消失することが多いものです。

もし一週間以上続くようなら薬を出してもらった医療機関に問い合わせてください。ただし好転反応の期間の見極めは一概に言えない部分があります。

なぜならば好転反応は副作用との鑑別も重要ですが、他にも鑑別を必要とするものがあるからです。

漢方薬を服用してから生じた症状は、それが今まであった症状の悪化であっても、また新たに生じた症状であっても、そしてたとえ出現した時期が漢方薬を服用したタイミングとぴたりと重なっていたとしても、必ずしも漢方薬のせいで起こったとは限りません。

違う影響により起こる場合も少なくありません。例えば天候の急激な変化、疲れや寝不足、人から受けたストレスなど、何か他の影響による悪化があたかも漢方薬により誘発されたと感じてしまうケースも臨床では少なくありません。

特に自律神経が乱れている方であれば、体にふりかかるあらゆる刺激に敏感になっています。かつ不安を感じやすくなっていますので、他の影響であったとしても漢方薬のせいだと感じてしまうケースが少なからずあります。治療の難しさの一つだと言えるでしょう。

好転反応に対応するためのコツ

・好転反応の可能性を聞いておく

患者さんとして、好転反応に上手く対応していくためにはどうしたら良いのか。実はそれほど難しいことではありません。

好転反応はその「可能性」と「対応の仕方」とをちゃんと理解しておくことで、むやみに不安にならず、上手に対応することができます。

つまり説明が全てであり、もし気になるようでしたら漢方薬を出された時点でその可能性の高さや起こり得る症状、さらに起きた時にどう対応すれば良いのかを是非質問し、確認しておきましょう。

漢方治療を専門にされている先生であれば、瞑眩や好転反応に対しても見解を必ず持たれていますので、必ず説明してくれるはずです。

・解決のカギは治療者とのコミュニケーション

瞑眩・好転反応は単に「良くなる前の症状」ではなく、副作用や他の刺激によるものとの鑑別を必要とし、さらに不安感を煽ることで治療が失敗へと向かってしまうリスクを孕むことから、決して簡単に考えることはできない反応だと私は感じています。

そのリスクをなるべく無くすために必要なものは何よりもコミュニケーションです。患者さんと治療者とが無理なくコミュニケーションを取りながら、起こる可能性のある症状とその対応の仕方とを、起こる前に把握しておくことが重要です。

そして治療得手の先生であればあるほど、そういう前持った、事前の説明の大切さを十分に理解しておられます。

好転反応は改善へと向かうサインでもありますので、不安にならずに治療を続けていけるよう上手にコミュニケーションをお取りください。



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※コラムの内容は著者の経験や多くの先生方から知り得た知識を基にしております。医学として高いエビデンスが保証されているわけではございませんので、あくまで一つの見解としてお役立てください。また当店は漢方相談を専門とした薬局であり、病院・診療所とは異なりますことを補足させていただきます。