年末の牙

2023年12月06日

漢方坂本コラム

まいりました。

牙をむく年末。

本来11月から12月初旬は、もう少し安定している時期であったはず。

にもかかわらず、多くの方が悪化しています。

自律神経の乱れと、そこからくる血流障害。

特に頭痛・めまい・耳鳴りなど、頭部に起こる症状が甚だしく、

さらに胃腸活動の不具合から、不安感・焦燥感などのメンタル面に至るまで、

今、苦しんでおられる方がかなり増えています。

令和5年、思い返せば、

普通ならば安定するはずの時期に、思いもよらぬ気圧の波を受けることがたくさんありました。

今の波もそう。年々天候が不安定になっています。

もっとメディアで取り上げられても良いのになぁと、

不思議に思うくらい、良い時期というものが少なくなりました。

日々患者さまの声を聞かせていただく私が、敏感になっているだけかも知れません。

しかし、そうではない気がするのです。

気象病という言葉を多く耳にするようになりました。

確実に、昨今の天候は私たちに牙をむいています。

そもそも天候による体調不良は、今に始まったことではありません。

漢方では遥か昔から指摘されてきた事実です。

むしろ、原始的な漢方は天候との闘いだったと言っても過言ではなく。

傷寒、中暑、湿病、温熱などなど、東洋医学では病の原因もしくはきっかけを、明らかに気候とリンクさせています。

西洋医学でも、気候による問題をもっと取り上げても良い気がします。

しかしそうしないこともまた、理解することはできます。

対応する手段がない、ということ。

自律神経を細部にまで理解し、調節する手段を持たなければ、

天候で乱れていることが明らかだとしても、打つ手が無いというのが本音だと思います。

そういう意味では、漢方治療には一日の長があると言えます。

天候と人との関連を、経験的に検証し続けてきたからです。

その手法も確かに多い。様々な方剤が、天候に則した対応を可能にします。

しかし昨今の乱れは、どうやら今まで培ってきた手法を再考する必要があるほどの、大きなものになっています。

単に寒気によって冷えたからこの処方、

単に湿気に当てられたからこの処方、

そういう一律的な治療だけでは、到底対応できなくなっています。

より本質を突きつつ、現実的な方針を打ち出せるかどうか。

天気という非常に強力なエネルギーのうねりを、

米粒に等しい人体が対応し得る手法を、見つけていかなければなりません。

ある程度の活路は見えています。

しかしこれだけ乱れると、再考の余地がある。

環境と人とが阻害し合う流れ、

それを、そのままにしていてはいけないと思うのです。

ポイントは血流の安定と筋肉。

ただそれを実現していくことの難しさを、近年ひしひしと感じています。



【この記事の著者】店主:坂本壮一郎のプロフィールはこちら