秋に先手を打つ

2023年10月19日

漢方坂本コラム

完全に季節が変わりました。

秋です。

そしていよいよ、寒暖差が強くなってきました。

ここ数週間は、週末に空が濁り、

気圧の影響で自律神経を乱す方も増えました。

最近は心地よい青空が広がっていますが、

それでも確実に、油断の出来ない季節になっています。

秋に起こりやすい体調不良、

それらがこの時期、決まって現れやすくなります。

特に下記の4つの症状にて治療中の患者さまにおかれましては、注意が必要です。

記載したリンクを是非ご参照いただき、

この秋、養生を徹底していきましょう。

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【秋の寒暖差にて悪化しやすい症状】

1、咽の痛み・風邪(上咽頭炎・副鼻腔炎)
2、腹痛・下痢・便秘
3、排尿障害・膀胱炎・間質性膀胱炎
4、顔のほてり・酒さ・酒さ様皮膚炎
5、自律神経失調

◇養生の実際・秋 ~夜間の冷え込みと悪化しやすい症状~
◇養生の実際・秋に起こりやすい症状 〜咽(のど)の痛みとその予防〜
◇養生の実際・秋から冬 ~自律神経の乱れ・不安・焦り・イライラ~

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最近になって実際に、

上記の症状にて治療中の患者さまに、ちらほらと悪化の傾向が出ています。

咽の痛みはすでに頻発しています。また、腹痛などの便通異常にも波が起きています。

比較的、酒さ・ほてりはまだ落ち着いています。しかし、油断はできないと考えています。

さらに、また台風が発生してきました。

週末にかけて、自律神経の乱れも生じやすくなってくるでしょう。

治療をしていて感じます。季節というものは、とても不思議です。

その時々で、必ず増えてくる症状・病がある。

人の体は、自然とともに変化しているのだと如実に感じます。

確かに悪化要因の全てが気候に関わるものではありません。

他にも、人体に侵襲するさまざまの刺激により体調は変化します。

ただしその中でも、気圧・気温・湿度は人にかなりの影響を与えます。

最近、「気象病」という言葉がしきりに使われるようになりましたが、

むしろ気象にまつわる病こそが、東洋医学の歴史上、最も古くから認識されている病です。

冷えが関与すればこの治療。湿気が関与すればこの治療。

そういう天候に関わる症状への治療方法が、東洋医学では2000年前に、すでに記されています。

したがって気象病こそが、東洋医学の得意分野だとも言える。

しかし実際には、言うほど簡単なことではない、という印象が私にはあります。

確かに、生じてくる症状に対応する手段はあります。

天候により悪化する頭痛や身体の痛み、動悸や息苦しさ、吐き気や胃もたれ・下痢など。

それらに対応する手段は豊富にある。しかし、

患者さまが本質的にお求めになっているのは、天候に左右されにくい体・・・・・・・・・・・、です。

これが難しい。

難しいというか、的確な治療方針と時間とが必要になります。

そもそも人体は、天候に左右されるように作られています。

天候に合わせて自ら変化し得ることで、体を正常に保っているからです。

暑いなら暑い状況に対応できる体へと変化し、

寒いなら寒い状況に対応できる体へと変化する。

そういう各状況で体を変化させ得るからこそ、自らを安定させることができます。

つまり、恒常性とは変化の安定を意味します。

外界に合わせて、安定して体を変化させることが恒常性です。

逆に天候に左右されてしまう体とは、

天候に対して、上手に変化できていない体であるということ。

したがって漢方では、変化しない体を作るのではなく、

変化を安定させる・・・・・・・・というのが、気象病治療の本質になります。

症状を取る治療ではなく、体を安定させる治療。

スムーズに変化させる治療。これが、非常に時間がかかるのです。

単に症状を取るというだけならば、比較的容易。

そうではなく、体を安定させる治療を行っていくためには、

自分に合った漢方薬だけでは、足りません。

必ず、養生が必要になります。

運動・食事・睡眠といった養生。体の安定を求めた場合には必ず必要になります。

東洋医学の書物には、症状の取り方は書いてありますが、

体の安定のさせ方は書かれていない・・・・・・・・・・・・・・・・

そこがミソになるのです。

つまり、東洋医学の基礎に則り、気象病の症状を取るということだけに終始していると、

必ず治療が後手に回る。

本質を突くことが出来なくなります。

気象病治療の本質は、天候に対してスムーズに変化できる体を目指せるかどうか。

私が各季節のたびに、口を酸っぱくして言っていることは、

スムーズに変化できる、安定した体を目指すことを、

達成するためのヒントに他なりません。



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