漢方坂本コラム

しもやけ予防と猫と毛布

しもやけを治していくためには、それ相応の治療が必要になります。例えば駆瘀血剤として有名な桂枝茯苓丸(けいしぶくりょうがん)を服用したとしても、出来上がったしもやけはなかなか治りません。人は、百人いれば百通りの血流状態があります。そこで今回は、簡単にしもやけにならないための養生をお話ししておきます。

漢方治療の経験談「ニキビ・尋常性ざ瘡治療」を通して

ニキビ治療の本質は、薬物治療と生活改善との両立です。ニキビは皮膚の病ですが、からだ全体を診ながらより大きく、「病態の流れ」を把握しなければなりません。ニキビ治療で有名な十味敗毒湯や黄連解毒湯、荊芥連翹湯や清上防風湯などは、ニキビの特効薬ではなく、あくまでこの流れの中の一場面において使う薬です。

漢方治療の心得 31 ~有限の医学~

江戸の名医、和田東郭の名言。無駄の無い処方運用こそが、術を上達させるという口訣。漢方の聖典『傷寒論』。そこに収載されている処方は、すべてシンプルです。簡潔な処方を、的確に運用すること。今、私たちに求められることは当にこれで、それこそがおそらく、有限の資源である生薬の枯渇を回避するための正しい向き合い方です。

◇養生の実際・秋 ~夜間の冷え込みと悪化しやすい症状~

夏から秋へ。そんな気配が感じられる今日この頃。秋を気持ちよく過ごすためには、夜の間、いかに体を冷やさないかが重要です。今回のコラムでは、秋に起こりやすい体調不良「咽の痛み・風邪」「腹痛・下痢・便秘」「排尿障害・膀胱炎・間質性膀胱炎」「顔のほてり・酒さ・酒さ様皮膚炎」を取り上げます。

■症例:お子さまの発熱(周期性発熱症候群)

周期性発熱症候群。お子さまに起こる、原因不明の自己炎症性疾患である。発熱、頭痛と腹痛、そして吐き気を伴い実際に食べたものを嘔吐する。食欲が減り、咽に膿が出だして、体を横たえる。風ではらうべき熱というものが、漢方の世界にはあって、古人はそれを「熄風(そくふう)」と呼んだ。体にそよ風が吹けば、熱は自ずと消散する。

人と腹と

漢方では古くから「腹」の重要性に着目し続けてきました。『傷寒論(しょうかんろん)』に記載されている「腹」という文字の多さや、江戸時代に隆盛を極めた腹診、稲葉文礼(いなばぶんれい)の名著『腹証奇覧(ふくしょうきらん)』の存在。漢方において「腹」とは見るべき体の要であり、生命活動を支える土台として、考えられてきました。

【漢方処方解説】柴胡桂枝湯(さいこけいしとう)

柴胡桂枝湯の適応は「風邪」「ニキビ(尋常性ざ瘡)」「婦人科の病:PMS・無月経など」「自律神経失調症」「パニック障害」「胃腸の病:胃痛・腹痛・下痢・便秘・過敏性腸症候群など」と、すべて一見脈絡がありません。今回の解説ではこの処方についてやや深く掘り下げて解説していくとともに、この不思議さの秘密を紐解いていきます。

人と処方

漢方処方はたとえ同じ名前であっても、効果が同じとは限りません。例えば桂枝湯という有名な処方があります。この処方は、使う先生によって効果の出方が全く異なってきます。例えば半夏厚朴湯は、咽に何かがつまって息苦しいという場合に良く使われる薬ですが、先生によってはこれを胃薬として使います。

□男性更年期障害(LOH症候群) ~漢方薬による対応とその実際~

女性特有の疾患と認識されがちだった更年期障害。実は男性にも起こるということが、今では広く認知されるようになりました。男性が心身の健康を維持するために必要とする男性ホルモン(テストステロン)が、何らかの理由で急激に減少してしまうために心身に不調をきたす病が、男性更年期障害(LOH症候群・加齢性腺機能低下症)です。

天気と抑うつ状態

今回の体調悪化は、7月や8月に起こっていた天候不良とは少々違い、やや独特な様相を、帯びています。頭痛や息苦しさ、胸の詰まりや耳鳴り、不眠といったいつもの症状を伴いつつも、体がとにかくだるい・やる気がおきない、といった「だるさ」が全面に出ている印象があります。そして、「抑うつ状態」を併発しているということです。