【漢薬小冊子】石膏(せっこう)

天然の含水硫酸カルシウムで、組成はほぼCaSO₄・2H₂O。配合処方例として、越婢加朮湯、白虎湯加人参湯、麻杏甘石湯、防風通聖散などが挙げられます。漢方では大寒薬(体を冷ます薬)に分類され、さまざまな炎症を抑える薬として使われます。例えばアトピー性皮膚炎や蕁麻疹など、皮膚炎にはなくてはならない薬です。

慣れていない人生

近年、お子さまのご相談が増えてきています。ここ5.6年の間で、一気に増えたという印象があります。起立性調節障害や過敏性腸症候群など。お子さまにおける漢方治療。各世代の中でも、特殊な治療を必要とする傾向にあります。目まぐるしく身体が変わる。精神的にも大きく成長する。その特殊性を鑑みる必要が、どうしてもあります。

信玄公祭りと浮かれた心

不安と共にくる、居ても立っても居られないというソワソワ感。古人は経験的に、この時にある生薬を使うことを編み出しました。桂枝加竜骨牡蛎湯とか、柴胡加竜骨牡蠣湯で有名な竜骨牡蛎です。不安からくる「落ち着かなさ」に、確かに効くことが多いのです。多分、浮き上がる感覚を、石と貝(鉱物)の重さで、落ち着けようとしたのだと思います。

秋に先手を打つ

秋の寒暖差にて悪化しやすい症状には、咽の痛み・風邪(上咽頭炎・副鼻腔炎)、腹痛・下痢・便秘、排尿障害・膀胱炎・間質性膀胱炎、顔のほてり・酒さ・酒さ様皮膚炎、自律神経失調が挙げられます。季節というものは、とても不思議です。その時々で、必ず増えてくる症状・病がある。人の体は、自然とともに変化しているのだと如実に感じます。

【漢薬小冊子】附子(ぶし)

大熱薬に分類される附子。体を強く温め、生命力を鼓舞するための最終手段。その薬能は冷えをとり、新陳代謝を高め、痛みを止めると言われています。附子剤と聞くと、適応する病態は新陳代謝の衰えた、虚弱な状態をイメージします。基本はそれでも良い。しかし、附子の薬能を紐解くと、それだけでは論じられない奥深さがあるように思います。

■症例:パニック障害・自律神経失調症

漢方治療は、症状から病態を把握する。一つ一つの症状に効く薬を出す。それが基本。不安感を主とすれば、桂枝加竜骨牡蛎湯や柴胡加竜骨牡蠣湯、また柴胡桂枝乾姜湯や甘麦大棗湯など、それこそ多くの処方が挙げられる。こうやって一つ一つの症状から、処方を結び付けていく。しかしそういう治療では、自律神経の乱れを治すことはできない。

すでに知っていること

患者さまは、治療が進んでいくと、皆、口をそろえてこうおっしゃいます。何で悪化するのかが分かりやすくなってきた、と。例えば睡眠不足であったり、例えば食事の不摂生であったり。天候であったり、月経であったり、悪化のきっかけを自覚できるようになる。知識ではなく、実感として理解できる。この気付きこそが、病が治るということです。

秋の足音

寒暖差によって、悪化する病がいくつかあります。まずは「酒さ・酒さ様皮膚炎」。顔が赤くなり、火照るという症状、更年期のホットフラッシュも、今時期悪化傾向が出てきます。そして次に多いのが「風邪」です。咽からくる風邪。特に気を付けて頂きたいのが、副鼻腔炎や上咽頭炎などの上気道の慢性炎症にて治療中の方々です。

◆漢方治療概略:「胃痛・みぞおちの痛み」

胃は自分でコントロールすることが難しい臓器です。このコラムでは、冷えによる胃痛対策としての「人参湯(にんじんとう)」等や、暴飲暴食やストレスによる胃痛対策としての「半夏瀉心湯(はんげしゃしんとう)」等、水の停滞による胃痛対策としての「六君子湯(りっくんしとう)」等、漢方治療の概略を解説していきたいと思います。

漢方治療の経験談「気管支喘息治療」を通して

喘息治療には永い歴史があります。漢方の聖典『傷寒論(しょうかんろん)』や『金匱要略(きんきようりゃく)』において、既に喘息治療は記載されています。喘息は、漢方によって改善しやすい病だと言えます。喘息における漢方治療の要綱を述べると、漢方では「本治(ほんち)」と「標治(ひょうち)」とを分けることが基本です。