漢方治療について

人と腹と

漢方では古くから「腹」の重要性に着目し続けてきました。『傷寒論(しょうかんろん)』に記載されている「腹」という文字の多さや、江戸時代に隆盛を極めた腹診、稲葉文礼(いなばぶんれい)の名著『腹証奇覧(ふくしょうきらん)』の存在。漢方において「腹」とは見るべき体の要であり、生命活動を支える土台として、考えられてきました。

人と処方

漢方処方はたとえ同じ名前であっても、効果が同じとは限りません。例えば桂枝湯という有名な処方があります。この処方は、使う先生によって効果の出方が全く異なってきます。例えば半夏厚朴湯は、咽に何かがつまって息苦しいという場合に良く使われる薬ですが、先生によってはこれを胃薬として使います。

天気と抑うつ状態

今回の体調悪化は、7月や8月に起こっていた天候不良とは少々違い、やや独特な様相を、帯びています。頭痛や息苦しさ、胸の詰まりや耳鳴り、不眠といったいつもの症状を伴いつつも、体がとにかくだるい・やる気がおきない、といった「だるさ」が全面に出ている印象があります。そして、「抑うつ状態」を併発しているということです。

漢方治療の経験談「子宮筋腫・子宮内膜症治療」を通して

漢方治療では、物理的に大きくなってしまった組織を小さくしていくことは、現実的に言うと難しいという側面があります。しかし、子宮筋腫や子宮内膜症に付随する様々な機能的問題、例えば経血量の過剰や貧血、激しい月経痛やPMS(月経前緊張症)など、これらの側面に対しては、高い効果を発揮することがままあります。

名医の空気

押しも押されぬ昭和の大家、大塚敬節先生。その一番弟子と目された先生に、相見三郎先生がいらっしゃいます。今回お会い出来た先生は、その相見三郎先生のあとを継いで、臨床に当たられた先生。漢方の技は、雑談の中で作られます。漢方家同士が、軽く話をする。なんてことのない、簡単な会話の中で、漢方の技が作られていくのです。

混乱させる医学

曖昧なものを、曖昧なまま治療することの出来る医学。あたかもそう見える漢方ですが、実際には、決してそんなことはありません。東洋医学を構成する言葉は、基本的にすべて曖昧です。その曖昧さを、それで良しとしない姿勢が必要です。その努力の積み重ねによって、今日の東洋医学があるといっても過言ではありません。

漢方治療の経験談「非結核性抗酸菌症治療」を通して

近年増加傾向にある感染症の一つに、非結核性抗酸菌症(肺MAC症)があります。非結核性抗酸菌という菌に感染することによって起こる病です。咳き込みや息苦しさ、血の混じる痰などが、なかなか治ってくれません。顕著なだるさや食欲不振などを伴うことも多く、当薬局でも多くの患者さまからお問合せを頂く病です。

漢方治療の経験談「更年期障害治療」を通して

更年期障害では、身体の血流を順調ならしめる必要があります。自律神経は血流をコントロールする神経です。また内分泌(ホルモン)は血流にのって運ばれる物質です。体の隅々にまで流れている血流。それを、どのように調節するのか。血流(血脈)という点に着目し、そこに心血を注いだ医学が漢方だと言っても過言ではありません。

梅雨と治療の難しさ

いよいよ梅雨に入り、この時期特有の体調不良が多くなってきました。自律神経の乱れや、頭痛・めまい・耳鳴り、消化器症状の悪化や、倦怠感や皮膚症状に至るまで。例年のことですので、その対応は経験済みの所です。ただやはり、難しい側面も多いなと感じています。今日はその辺りを、ちょっとお話してみようと思います。

漢方治療の経験談「起立性調節障害治療」を通して 3

補中益気湯や苓桂朮甘湯など。すべでの起立性調節障害が王道だけで治せるわけではありませんが、中にはこれらの薬で治る方はもちろんいらっしゃるわけで、王道は王道として、大切な手法だと感じています。ただその一方で、患者さまが受けてきた漢方治療の中には、それはマズいと思うようなものもあります。