漢方坂本コラム

漢方治療の心得 36 ~情報発信~

東洋医学を医学として成り立たたせるためには、客観的かつ再現性を持った根拠を提示する、よりエビデンスレベルの高い水準が求められて然るべきです。ただし同時に、東洋医学は医療でなければなりません。医療であるということは、人が治せるということ。症状を消失させ、病による生活の質の低下から救済するということです。

漢方治療の経験談「花粉症治療」を通して

急に暖かくなった時期、鼻炎を訴える患者さまが増えました。そのほとんどが毎年3.4月に花粉症を起こす方々です。まるで春のような気候に体が反応したのでしょう。花粉症は花粉により起こるアレルギー性鼻炎ですが、私の感覚では花粉だけで起こっているわけではないと思います。急激な気温や気圧の変化。気候・天候も少なからず影響しています。

新春の波

気温と気圧との急激な変化により、ここ数日体調を崩されている方が増えてきています。もっとも多い訴えが、胃が痛い、胃がはって苦しい、むかむかと吐き気が起こる、胸が苦しく痞えて脈が乱れる、などの胃症状と胸の症状。同時に倦怠感やめまい、頭痛・不眠を起こしている人も多い。そして不安が強く出て焦燥感を伴っている人がほとんどです。

【漢方処方解説】銀翹散(ぎんぎょうさん)

のどの痛みに効く薬、銀翹散。のどの痛みに効くというのは確かにその通りです。ただし、咽の痛みなら何でもよいというわけではありません。銀翹散は比較的最近になって作られた処方で、中国清代に呉鞠通(ごきくつう)によって書かれた『温病条弁(うんびょうじょうべん)』によって初めて世に紹介されました。

■症例:下痢・しぶり腹

下痢は原始的な症状である。漢方でも約二千年前からその治療法が述べられている。今まで何人もの名医が、下痢の治療を述べてきた。また、しぶり腹、という症状がある。漢方では裏急後重(りきゅうこうじゅう)という。テネスムスとも言われ、便意があっていざトイレに行っても、少ししか出ない。感染性の胃腸炎などで一時的に起こることが多い。

新年のご挨拶

漢方が医学として、また東洋医学が文化として、今現在直面している課題、そこからもう目を逸らすことが出来ないステージにきています。漢方によって救える病があり、漢方によって導ける幸せがある。そういう事実がある以上は、この課題解決を諦めるわけにはいきません。直実に一つずつ、解決していかなければなりません。

年末のご挨拶 ~今年一年の総括と伴に~

東洋医学では2000年も前から、天候の乱れによる病の治療が考察されています。しかし私の実感としては、培われてきたその手法をもってしても、現在の気象病に対応することが難しくなってきています。それだけ天候が今までにないレベルで乱れているということ。そして同時に、昔に比べて人間が弱っているということでもあります。

毎年恒例・恐怖の年末

皮膚も、痛みも、消化器も、自律神経も、すべて年末に悪化する人が激増します。その原因の多くは、忙しさに埋没してしまう生活習慣です。食事と睡眠。守ってきた今まで通りの食養生が守れなくなることで、体調は一気に悪化します。また寝不足も大敵です。睡眠が削られると、体の疲労が蓄積するだけでなく自律神経も乱れていきます。

漢方とアート 12 ~直線と曲線~

そもそも人間は自然物です。自然によって生まれ、自然の中で生きる自然の構造物です。曲線的で変化的、有機的で変則的。一方で医学とは合理的・人為的な「直線」をもって、人間という「曲線」を理解し、影響を与えようとするものです。医学は直線をもってどこまで曲線を測れるのか、その勝負をずっと続けているのです。

■症例:過敏性腸症候群(IBS)

心理的要因(ストレス)が強く影響していると考えられる心身症の一つ、過敏性腸症候群(IBS)。そういう機能的な病には、漢方薬がしばしば選択される。特に桂枝加芍薬湯、半夏瀉心湯、大建中湯に関しては、IBSのガイドラインでも有効性が示唆されている。これらは上手に使えば良く効く薬ではあるが、それでも効かない人は、当然いらっしゃる。